第55話



フロアボスを倒して下り階段のところに戻ると、いつの間にか結界が外れていた。


フロアボスを倒すと結界が外れるってのは本当だったんだな。


まだダンジョンに入ってからたいして時間も経っていないし、疲れてもいないから、そのままダンジョン攻略を進めることにした。


地下31階からは前衛が主に俺とカレン。

カレンは避けるの重視でセリナが少し離れてカレンを見て、危なかったら助ける感じだ。

アリアは全体を見ながら支援をするといった形で進んだ。


俺はイーラをいろんな武器に変えて好きに練習しているから、全体的に攻略ペースが遅い。もともと練習とレベル上げが目的だからべつにいいっちゃいいんだが、今日は地下33階までしか進まなかった。



べつに魔物の量が多かったわけではない。


今まで攻略されていなかった地下30階以降はどんだけ魔物が溢れかえっているのかと思ったが、フロアボスを倒さない限り、それより下の階の魔物は規定数以上は生まれないようになっているのかもしれない。


まぁ実際はわからないが、そう思ってしまう程度にしか魔物がいなかった。



こっちは間違いないことだが、地下に下りれば下りるほど広くなっている。


階によっては隠し部屋があったりするが、それは例外だ。


隠し部屋を除くと、徐々に広くなっているようだ。


ダンジョンマップで確認を取れるから間違いないだろう。


それに魔物が徐々に強くもなっているから、攻略ペースがさらに遅くなる。

といってもまだたいした強さではないがな。


まぁ俺らがマップを全部埋めてから下に下りてるから遅いってのもあるかもな。



まだ時間的には早いが、もう1フロア攻略するほどの時間はないから宿に帰ることにした。



カレンの回避能力も上達してきたし、明日はイーラを使って刀で斬る練習でもさせるかな。




宿に到着後、全員で晩飯を食べてから自由行動とした。


それぞれに銀貨1枚ずつ与えて、村の中なら好きに行動していいと告げてから宿を出て、そのまま村の外に出た。


今は村の入り口から少し離れた芝生に座っている。


ちなみに俺についてきたのはアリアだけだった。


なぜ村の外に出たかというと失敗を恐れてだ。


なんの失敗かというと空水晶に魔法を詰める作業をしようと思ってるからだ。


こいつの威力は経験したからわかっているが、かなり使えると思う。


もう自爆技として使いたくはないが、勝てない相手に遭遇してしまったときの最後の手として持っていた方がいいだろう。


空水晶は100個以上あるしな。


アリアには何をするかは告げてないが、アリアが来てくれたならマジックシェアをすれば10個くらいは作れるだろう。


「アリア。これから氷結玉とかを作ろうと思うから、マジックシェアを使ってくれ。」


「………はい。」


「大丈夫だ。失敗しそうになったらアリアを抱えて全力で逃げるから。」


「…はい。」


『マジックシェア』


よし。これで俺1人でやる場合の倍以上はできると思ったが、やけにMPが増えたな。4倍近くないか!?


見えない位置にいる他のパーティー分もシェアしたのか。

アリアはどんどん凄くなってくな。


「…わたしもやってみてもいいですか?」


「べつにかまわないぞ。」


じゃあと作り方の説明をしようとしたら、その前にSPでの『アマス』の取得申請がきた。


許可を出すとすぐに『エンチャント』の取得申請もきた。


もちろん許可だ。


でもアリアって空水晶に入れるような攻撃魔法って持ってたっけか?


そう思っていたら、アリアが確認を取ってきた。


「…上級魔法を取るためにSPはいくつ必要になりますか?」


「上級魔法シリーズを全部取るには確か…1×7+2×7+4×9+8×7だから、113かな?」


「…ありがとうございます。」


そしたら次々と許可申請がきた。


一気に許可とかできないもんかね。


仕方ないから1つずつ許可をして、アリアは初級魔法、中級魔法、上級魔法をコンプリートした。


「ジョブが増えてるだろうから取得して、フォースジョブとフィフスジョブとシクススジョブも取っとけよ。」


「…はい。」


アリアからSP消費の許可申請を全部許可したあとにジョブ設定で魔法使いと魔術師と魔導師をセットした。


アリアに空水晶を10個渡す。


「好きにやってみろ。俺も勝手にやってるから、すぐMPがなくなるだろう。そしたら今日は終わりだ。空水晶は100個以上あるから、失敗してもいい。だから強敵にも使えそうなやつを作れ。」


「…はい。」



同じのを作っても面白くないからな。


俺はとりあえず業火玉と氷結玉を5個ずつ作るか。



俺の場合はフレアがないから、薬屋の女から教わったのとは少し違うが、上級魔法の火の火力をできる限りあげたのと上級魔法の風で作れそうだな。


氷結玉は上級魔法の風を2回と上級魔法の冷をできる限り温度を下げたやつだったよな。



俺が作業を始めると、隣のアリアがジッと見ていた。


そうか。とりあえず見本を見せなきゃだよな。


空水晶を1つ手に持った。


『アマス』


『上級魔法:火』

『エンチャント』


『上級魔法:風』

『エンチャント』


慣れれば魔法の同時発動も普通にできるな。


元空水晶の色も業火玉に似てるしたぶん大丈夫だろう。

でも心配だから、とりあえずこれは1つにして、一度ダンジョンで試してみよう。

成功してたら量産しよう。


「ちなみに魔法を発動したらすぐに『エンチャント』を使うのがMPの消費を抑えるコツだ。」


「…はい」


アリアは空水晶9個をアイテムボックスに入れ、1つだけ手で持った。


『アマス』


『上級魔法:水』

『上級魔法:電』

『エンチャント』


『上級魔法:熱』

『エンチャント』




アリアは特に難しくなさそうに魔法を3つ同時に発動させやがった。


しかも『エンチャント』は1つしか付与できないのに、水と電気を混ぜてから発動することで、それを1つとしやがった。


なんか1発でアリアに抜かれた気がする。

薬屋の女が俺に嫌なやつといった意味がちょっとわかったよ。


「変に衝撃与えて割れたらまずいから、すぐに名前をつけてアイテムボックスにしまっちゃえよ。」



さっき作った業火玉をアイテムボックスにしまって初めて知ったのだが、名前を決めてアイテムボックスにしまうと、ちゃんとその名前で区別された。


前回の氷結玉は名前をつけてなかったから、『空水晶(加工済み)』と表記されていた。

これじゃあ効果がわからないからな。


アリアがアイテムボックスに元空水晶をしまった。


「なんて名前にしたんだ?」


「…電爆玉です。」


おっ、アリアのドヤ顔を初めて見た。


圧縮した水に高熱を加えて水蒸気爆発を起こす感じか?その場合は電気の効果って残るのか?

化学的には俺は知らないが、アリアのドヤ顔がちょっと可愛かったから、この世界では大丈夫だろう。きっと。


「そんな感じでいろいろ頼む。明日のダンジョンで試してみて、使えそうなのは量産しよう。」


「…はい。」




MPがなくなるまでの作業だったから、終わるまで1時間もかからなかった。


作れたのは全部で12個だ。

MPの無駄消費という失敗がけっこうあったわりには意外と作れたことにビックリした。


前回、氷結玉1つでMPの底を尽きかけてたのに上級魔法を発動させてからエンチャントを発動するまでの時間をほぼなくしたら、けっこう作れた。


まぁ6人分のMPをシェアしてたからってのもあるか。



業火玉

氷結玉

電爆玉

閃光玉…『上級魔法:光』を3回

灼熱玉…『上級魔法:熱』と『上級魔法:風』を2回

電撃玉…『上級魔法:電』を3回

水爆玉…『上級魔法:水』と『上級魔法:熱』

電水玉…『上級魔法:電』と『上級魔法:水』と『上級魔法:風』


出来上がったのは以上だ。

氷結玉だけ効果を知っているから5個作った。あとは1つずつだ。


作業を始めてからわかったのは液体は入れられるのに固体は入れられなかった。

他にも中級魔法やフレアバウンドなども試したが、なぜか入れられなかった。ある程度操作できなきゃダメなのか?


とりあえず上級魔法シリーズの試したやつは固体以外は入れられた。

闇とか影は入れたところで使えるかわからなかったから、後回しにしてたらMPがなくなったから試してない。


あとは使ってみて調整していくしかないだろう。


今日新しく作った中で1つでも使えるのがあったら儲けものだ。


「手伝ってくれてありがとな。宿に帰るぞ。」


「…はい。」

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