第285話 側妃のトークタイム
エマーニ達の二人への用件はシンプル―――閨について。
「
ハルマヌークは思わずキョトンとした。
「え、ええ……いえ、私も当然、知ってはおりますわよ? 初めてではないのですからして……」
元々どこか背伸びしているようなところのあったエマーニだが、言葉遣いがいつにもまして不安定。
話によるとどうやら久々に今夜、陛下の “ お通い ” があると、つい先ほど通達を受けたのだそう。
しかし……
「わ、私は……その、は、恥ずかしながら庶民の娘でしてから、その……う、上手くヤれる自信がなくっ、その……」
かつて陛下と初めての夜、後宮に入ったばかりということもあって、礼儀作法のなっていない壊滅的な醜態をさらしまくってしまい、それ以後……陛下の “ お通い ” はなく、今日まで悶々としてきた。
懸命に背伸びし、厳しいヴァリアスフローラの指導にも他の側妃達よりも真面目に受け、言葉遣いや作法などを磨いてはきた。
だが時間を大きく開けての、久しぶりの “ お通い ” の意味を悟った時、急に焦りが湧いてきたのだという。
「あー、なるほどぉ……いわゆる
さすがに男女の
ファルメジア王は、別に全ての側妃を平等に扱う必要はない。
側妃達の存在とは、立場上は王の子を成すを目指しはしても、身分は後宮という檻に囚われている奴隷のようなもの…… “ お通い ” がないからといって、不平不満を口にする権利は彼女達にはない。すべては陛下の御心のままになのだ。
しかし今代の王はお優しい。自身の
でなければ今頃、毎晩のようにシャルーアの元に通っていたことだろう。
「え、ええ……それでその、悔しいですが、貴女たちは陛下の覚えがめでたいと評判でしょう? その……」
「つまりアドバイスが欲しい、ってことねー」
エマーニはぐぬぬとしつつも、呼吸を挟んで気持ちを落ち着け、ハルマヌークに小さく頷き返した。
彼女も側妃という立場に夢を抱いている女の一人だ。その務めを果たすにあたり、他の側妃はライバルで、頭を下げて頼みごとをするというのはプライドが傷つくのだろう。
彼女の後ろ左右にいるデノとアデナラは、苦笑を浮かべながらも、一つよろしく頼めませんかと視線とジェスチャーをしている。
エマーニに比べてどこか余裕がある二人は、まださほど陛下との閨で失敗や困りごとなどはないのだろう。
「ん-……アドバイスねー。シャルーアちゃん、何かある?」
「そう、ですね……。エマーニさんは、陛下への
パッと見たところ、エマーニの容姿は決して悪いものではない。
むしろ庶民上がりと考えたなら、十分にその器量は優れている。彼女曰く、貴族の推薦で商売人の父から離れ、後宮に入ったとのことだが、その貴族は確かな見る目があったと言えよう。
しかし身長はシャルーアとほぼ同程度ながら、その凹凸のほどは劣る。女性特有の身体の各部位を使って奉仕するのも得意そうな風には見えない。
「
「……」「……」「……」「……」
ハルマヌークは、そこ!? という顔で無言。
シャルーアは、それは基本ですね、という顔で無言。
デノは、あれ!? 服の着脱の手伝いしなきゃいけないの!? という顔で無言。
アデナラは、あー、エマーニの胸じゃできないもんなー…… という顔で無言。
「ちょ、ちょ、ちょっと皆さん、というかお二人まで何で無言になりますのよ!? え、え……何か間違えていますの、私!?」
「いえ、それも大変重要なことには違いありません。ですがそれは
シャルーアにそう言われて数秒、意味を頭の中で咀嚼し終え、ご奉仕の意味に理解至ったエマーニは、一気に頬を赤くした。
「そ、そそそ、そういうことですのね? いえ、それはもちろん分かっていますわよ、ええ! ちょ、ちょっと間違えたでけで―――」
「じゃあ、ピーーーーーーとか、ピーーーをする感じ??」
「ほへっ!?」
ハルマヌークに過激なワード混じりで言われた瞬間、エマーニがビクンと震え、ヘンな声を上げる。
「胸がありましたら、ピーーーでピーーーーをピーーし、ご奉仕できるのですが……エマーニさんも、出来なくはないとは思います。多少、寄せて上げる必要はありますが」
「んなっ!?」
ハルマヌークの発言を皮切りに、何かが始まった。
シャルーアが彼女に続くように言葉を紡ぎ、またしてもエマーニが驚愕する。
「無理にする必要はないんじゃあ? あ、乳肉じゃなくってさ、ピーーをこう持って来てピーーするっていう方がよくない?」
「ちくっ!!?」
アデナラが参戦!
「あ、あの……私の故郷の村で、ピーーーをピーーにピーーーーーする事で、男性に快感を与えることが出来るって、教わりました。それならエマーニさんでも可能ではないでしょうか?」
「すまっ!!!!!??」
デノが参戦!!
こうして4人の内の誰か発言するたび、驚きと羞恥にまみれていくエマーニは、やがて
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