第26話 おじさん失踪事件

「・・・でもさ、あいつ本当に悪い奴だったよな。なんかこう、悪の鏡的なオーラ出してたぞ」


 斉藤がそう言いながら、またコーヒーを一口。


「それ俺も思ったよ。おじさんにあれだけ痛め付けられて、色々説得されてもまるで堪えないんだもんな」


 そこまで言うと俺ももう一口。そしてそのまま腰掛けに面している白壁に頭をつけた。


「絶体絶命だったのかな・・・?」


 俺がそうポツリと言うと、斉藤が体を近づけて言った。


「それを救ったのがお前だよ。いやぁ、最後に決めてくれるよお前は!」


 そう話す斉藤の目は輝いていた。その目に偽りはない。俺の事を素直に凄いと思っていてくれる目だ。流石にそこまでされると照れるが、悪い気はしない。


 事実、その後の反省の色無しの泥棒に一言物申したのは俺に違いないのだ。そこをもう一度掘り起こしてほしくて、わざとらしく絶体絶命だなんて言って斉藤の言葉を誘発させた。俺も大概悪い奴である・・・。

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