第71話 悩めるタケ
か、可愛い・・・。やべぇ、純子だっけ?マジで可愛いじゃねぇか。
何だよ!タケとは血が繋がってないから正直あまり期待してなかったのに、いやいや、タケの本当の妹には会ったことはないけど、多分間違いなくこっちの方が可愛いだろ!
う~ん、これはもはやアイドルですな。素人なのか本当に?芸能事務所に入ってるだろう間違いなく。
セーラー服ってのがまたいいねぇ。純子っていう名前とセーラーで一見古風な感じを受けるけど、目が大きくて細く整えられた眉に、スッと通った鼻筋に柔らかそうな唇、肩までの薄いベージュの髪がお洒落で今風で完ぺき。大人っぽい雰囲気だけど、よく見るとこないだまで中学生だったことが容易に分かる幼さも加味された、正に美少女というのはこういうものだと言わんばかりのスーパー美少女だぞこりゃ。
っと、心の中とはいえ、めちゃ多弁に喋ったな。ちょっとキモかったかも。でも、三次元の女でこれだけの衝撃を得たのは稀だ。水原さんともいい勝負だよな。いや、純子の方が若いし十代だし本当は・・・。
「・・・先輩?どうしました?」
「え、い、いや・・・」
ゴホンゴホン・・・。ま、気を取り直して・・・。
「こ、この子がお前の妹なんだな?」
「ええそうです。名前は純子、一応今のところは・・・」
「は?どういう意味だよ一応って」
「妹は今、役になりきってるんです。純子っていう」
「はぁ?」
何だ何だ?何を言ってるのかさっぱり分からんぞ?分かるのは純子が飛び切りの美少女って事だけだ。
「兄貴、この人がその先輩?」
あ、兄貴?な、何か見た目に似合わず豪快な呼び方するな。それに可愛さに釣られて忘れてたけど、さっきの高笑いは何なんだ?とりあえず電話しながら帰ってきたのは分かる。あの高笑いは電話相手にしたって事だよな?
「まあ、とにかく上がれば?兄貴がいつも世話になってまーす」
「あ、ああ・・・」
か、可愛いけど初対面でタメ口とはどういう了見だ?
ま、まあリビングに上がってとりあえず、タケの母ちゃんから茶を淹れて貰ったわけだけどよ。俺はこれからどうなるんだ?一体何を聞かされるんだ?
「・・・すみません、お腹すきましたか?母が今夕ご飯を作ってくれています。今日はハンバーグらしいですよ」
「そ、それはありがたいけど、あの妹は何なんだ?いつもああなの?」
「い、いえ、今はあの時期なんだと思います」
「時期?ちょっと分からないことが多すぎるぞ?役とか純子の名前が一応とか」
「は、はい、それは順序だって話します。今日先輩が来ることは母にも妹にも話してはいたんですが、理由は話していません。拗れると面倒なことになるので。先ずは妹の事を直に見てもらって知ってもらいたくて」
「それは分かったよ。まあ、あれだけインパクトのある妹だもんな、何かと慎重にしなきゃいけないのは何となくわかるよ」
「はい、すみません気を使ってもらって・・・」
ん?なんか石鹸のいい香りが漂ってくるな?何だ?
「ふぅ~、さっぱした!」
おふっ!湯上りパジャマスタイル!や、やばい破壊力抜群だ!上下真っ赤なパジャマ可愛い!半濡れの髪ヤバイ!そして、そして・・・!
「せ、先輩どうしましたか?」
「あ、い、いやもう少しで気を失いそうに」
「え!?大丈夫ですか?どうしてまた!?」
「いや、もう大丈夫だ・・・」
「あ、先輩さん、今日の晩御飯ハンバーグらしいよ、家のハンバーグは旨いんだから」
「あ、そ、そうなんだ」
「ん?兄貴の先輩にしては暗いねこの人」
「い、いや、普段は明るくていい先輩だよ?ねえ、先輩」
「あ、ああ・・・」
な、何なんだよこの妹は、ペースが全然掴めない。まだ出会って間もないとはいえ全然分からんぞ。
「あ、じゅ純子、お風呂入ったのね、ご飯食べるでしょ?」
「んー?いらないよ、さっきハンバーガー食べてきたし」
「で、でもあなたハンバーグが最近食べたいって・・・」
「だからって作ってくれとは言ってないっしょ。それに今ハンバーグ食べてきたし。ま、バーガーだけどね!キャハハハハハ!」
な、何だ!?また高笑いして、二階に上がって行ったみたいだな。一体全体何事が起きた?もう俺パニックだよ・・・。
「お、お母さん大丈夫?純子の分のハンバーグは僕が・・・」
「いいのよ、お父さんのお弁当にするわ。あ、すみませんね、もうしばらくお待ちください・・・」
「え!?い、いえいえ、どうぞお構いなく」
な、何か寂しそうに台所へ戻っていくなタケの母ちゃん。なんかめっちゃ気まずい雰囲気になってしまったぞ?
「・・・という感じなんですよ」
「え?という感じって?」
「妹とお母さんの関係です」
「あ、ああ、確かにあれじゃお前の母ちゃんもどう接していいか分からないかもな。あの妹、キャラ濃すぎだぞ?」
「はい、いくら役でもちょっと行き過ぎてますね」
「・・・おい、そろそろ話せよ。役って何だ?それに純子って名前は一体?」
「あ、はい。今のうちに話しておきますね。すみません、慌ただしくて」
「い、いや、いいけどよ・・・」
「どこから話しましょうか・・・。やっぱり一番最初からでしょうね。あの先輩は(純ちゃんの時間旅行)って本を知ってますか?」
「ん?純ちゃんの時間旅行?あれ?どっかで聞いたことあるなそれ。なんか従兄弟のガキが昔読んでた気がするなぁ」
「あ、それです。児童小説ですよ。実はその作者が、今会ったうちの妹なんです・・・」
「な、何だって!?」
こ、これは衝撃の展開だぞ・・・!?
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