二人の女の子を同時に好きになった場合は浮気に入りますか? その1

「ユウくんーもう寝ちゃうの?」

「うん。俺はもう寝るぞ」

「そーう。それじゃあ、わたしももう寝よっと」

恵梨香が俺のベッドに潜り込んできた。

「いやいや待て待て。俺と一緒のベッドで寝るとかいうのかよ!」

「そうだよー。言っちゃうよー。というか、姫乃ちゃんとも一緒に寝ているんでしょ?」

「あぁーまぁー」

面と向かって聞かれるのは恥ずかしいものだ。

「それじゃあ、わたしとも一緒に寝れるよね?」

「それはダメだろ。一応、姫乃は彼女だからな」

「でも、わたしだって幼馴染だよー」

「幼馴染と彼女の差は大きいと思うけどなー」

「ええー。昔は一緒に寝てくれていたのにー彼女が出来たらすぐに捨てるんだー、わたしのこと」

「言い方の問題……。俺が最低男みたいに聞こえるじゃないか」

「そのつもりなんだけどなー」

「え? ちょっとそれどういう意味だよ」

「言葉通りの意味だけど……」

数秒間の沈黙。そしてお互いに目を合わせる。

「ちょっと待ってくれ。それに一緒に寝ていたって言っても子供の頃だろ?」

「そうだよー。子供の頃だけど……今だって別にやましいことはないと思うんだけどなー。逆にやましいことを期待してるのかなー?」

それはするだろ。普通に考えて。

だってさ、恵梨香の方から俺にキスをしてきたわけだし。

それなのに、期待するなと言われても流石に無理があるっていうか。

「あー今、エッチなことを考えていたのかなー?」

「してないって……。あ、そうだ。俺は他の場所で寝るから。恵梨香はベッドで寝ろよ」

「えー無理だよー。だってさ、ユウくん風邪を引いているじゃん!」

そういえば、俺風邪を引いていたなー。

もう完全に鼻水とかも止まっていたから……風邪って感じがしなかったんだよな。それに咳も無くなったし。

「もう、俺は大丈夫だよー。恵梨香は色々と頑張ってくれただろ? だからさ、ベッドを使ってくれ」

「えー悪いよー。使えないよー」

「まぁ、いいからいいから」

「じゃあ、一緒に使おぉ?」

恵梨香が俺を誘ってくる。それにベッドから離れようとする俺のシャツを掴み、行かせないようにと試みている。

「それはまずいっていうか」

「大丈夫だよー。それにわたしはユウくんの看病がしたいから一緒にいなければダメだと思うし。それに突然また熱が上がったら、ユウくん一人で夜は辛くなる可能性だってあるでしょー? だから近くにいた方がいいと思うんだー」

まぁ、油断大敵って言葉もあるしな。それに熱は粗方下がったとは言え、まだ頭がクラクラするのは治っていないし。

だが、ここは男として断固拒否だ。

「わ、悪いよー」

「大丈夫大丈夫。それにわたし達、幼馴染じゃん。だから何も起きないよ……多分」

何だか、その多分の言葉が信頼性に欠けると思うのだが。

先ほどまで俺にキスをしてきた前科があるからなー。

でも、俺も恵梨香を求めていたってこともあるし。

あーこれって浮気っていうのか。姫乃にバレたら、本気でまずい。

だから口封じをしなくては。その為には、恵梨香の機嫌を取る必要があるよな。

「そうだよなー、何もないよなー。俺たち、ただのなんだからさ」

俺の言葉に恵梨香は表情を顰めてしまった。

そしてむっとして、「ユウくんのバカ……」と呟き、さっとベッドから出て行ってしまった。

俺が恵梨香の腕を掴んだら、「触らないで!」とキツく言われてしまった。

本当に女の子の扱いって大変です。

正直、何がいけなかったのか分からない。

でも俺が何か地雷を踏んだことだけは確かだろう。


十分ぐらい何も考えずに、ベッドの上で大の字になって寝転んでいた。

すると、部屋の隅からジッと視線が。それもかなりのかまってほしいみたいな目でこちらを見てきている。

幽霊などがこの家には住んでいるわけではないので、その視線の元は全て恵梨香だ。自分から「触らないで」とか強い言い方をしたのにも関わらず、またかまってほしいアピールをするところは子供の頃から変わらないな。

正直、俺たちの関係はいつもそんな感じだった。

喧嘩などをした次の日にはいつも通りの関係に戻るっていうか。

謝ることもなく、ただ昨日の喧嘩が全て嘘だったかのように……普通に接してくれているみたいな。正直、俺はそんな恵梨香との関係が大好きだった。

色々と考えなくていいっていうか。別に喧嘩しても、明日には仲直りできているっていう安心感があったから。

だけど、本当にそのままの関係でいいのだろうか。

正直な話、喧嘩が次の日にまで長引くことはなかったから、物凄く気分は楽だった。それに救われていたところもある。

でももう俺たちはいつまでも子供ってわけにはいかないだろう。


「恵梨香……」

「…………」

完全に無視されている。それに外方を向かれている。

「さっきは悪かった」

「……何が悪かったのか分からないでしょ?」

「そ、それは……」

「はー本当ユウくんって乙女心が分かってないなー」

「それはそうだろ。俺は男なんだからさ」

「まぁ、それはそうだよねー。わたしだって男の子の気持ちとか全然分からないし。それにユウくんの心の中なんて全く分からないよ」

「同じく。正直、今まで近くにいたけど、恵梨香の考えていることはあまり分からない」

「本当、どうして何だろうねー。こんな近くにずっといたのに」

「俺たち、お互い分かっているふりをしていただけだったのかもな」

「分かっているふり?」

「そう。俺たちって、いつもいつも喧嘩しても次の日は何もなかったように接していただろ。たしかにそれで救われていたところはある。でも、お互いに気持ちをぶつけていなかっただけなんじゃないかってさ」

「……まぁ、それはあるかも」

「だろ?」

「うん」とゆっくりと頷いた。

そして恵梨香は腕を後ろに組んでポツリと呟いた。

「言わないと伝わらないんだよね……」

「まぁーな。言わなくても伝わる言葉があるように、言わないと伝わらない言葉もあるんだよ」

「そっか」と恵梨香は首肯し、「……す、好きだよ」と顔を真っ赤にさせて言った。

突然の「好き」という言葉に俺は面食らってしまう。

たった二文字の言葉なのに。

どうしてこんなにも人の心を揺さぶるのだろうか。


「知ってるよ」

「えーじゃあさ、ユウくんはわたしのこと好き?」

目元を潤ませ、協調を求めるかのように言葉をかけてくる。

だから俺ははっきりと意志を伝える。自分の本当の気持ちを。


「好きじゃない……」

「えっ」彼女の口から漏れた悲鳴に満ちた吐息。

口元を押さえ、目からは自然と涙が溢れ出してきた。

俺はそれを掻き消すように言葉を続けた。


「だって、俺は恵梨香のこと大好きだから」


鳩が豆鉄砲を食ったように目元を見開き、恵梨香は立ち尽くしてしまう。

俺は恵梨香の元へと急いで向かい、彼女の背中へと腕を回した。

自分の方へと彼女の身体をギュッと引き寄せる。

体温と共に、彼女の鼓動が聞こえてくる。

恵梨香も緊張しているのだろうか。


俺には彼女がいる。姫乃がいる。

それは理解していた。正直な話、最低だとレッテルを貼られるかもしれない。

だけど、もう自分の気持ちには正直になるべきだろう。


「ゆ、ユウくん……わ、わたし本気で好きになっちゃうよ。それでもいいの?」

「……もう、俺は本気だよ」

「今の言葉、姫乃ちゃんが聞いたら絶対に怒ると思うよ」

「分かってる。でも、俺……恵梨香も大好きなんだ」

「恵梨香もって……わたしは二番目なの?」

声色が物凄く怖い。また、彼女は俺を引き離そうとしてくる。

そしてお互いに顔を見合わせると、ギロッとした眼光で睨まれてしまう。


「同着1位だぁ!」

「はーそれ、別に名言とかじゃないからね!」と呆れたように言った。

「分かってるよ。ただ優柔不断な男だってことぐらい」

「もうー。普通、こういう時はお前だけが好きだとか愛してるとか女の子は言って欲しいんだよー」

「ご、ごめん……」

恵梨香は口元を指を触り、ふふっと何か悪巧みを思いついたのか邪悪な笑みを漏らす。

「それじゃあ、問題を解けたら許してあげる」

「問題?」

「うん、簡単な問題だよ。では問題——」

「お、俺はやるとは一言も……」


だが、恵梨香は言葉を止めることはなかった。


「わたし——西沢恵梨香はユウくんにとって何?」

彼女の瞳は真剣だった。これは一体どのような意味を持つのか。

正直、意図が分からない。ヒントを貰いたいが、多分教えてはくれないだろう。


「あ、ちなみに『大切な人』とかの曖昧な回答は受け付けません!」

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