だって好きなんだもん!?

頭の中が急激に真っ白になった。

正直、何が起きたのか分からなかった。

柔らかな感触が俺の唇を襲い、そして……。

恵梨香が舌を絡めてくる。だから、俺は恵梨香を引き剥がそうとする。

でも恵梨香の力は強くて、なかなか離れてくれそうに無い。

さらには、俺の首をがっしりと両手で押さえているのだ。

でも、俺は彼女の肩を思い切り押して、彼女を引き剥がした。


彼女は態勢を踏み外して、身体を少しだけよろめかせた。

そして、ふふふと不気味に微笑んだ。


「……恵梨香。一体どういうつもりだよ!」

正直、いきなりキスされて、俺はかなり動揺していた。

もう何も考えられないっていうか。相手が何故こんなことをしたのかっていうことばかり考えてしまうのだ。


「わたしね、自分の気持ちに気付いたの」

恵梨香の声は震える俺の声とは対照的に、とても明るかった。

まるで無邪気な子供のような声。俺はそれが不気味に感じられてしまう。


「自分の気持ちって何だよ」


「わたし、ユウくんのことが大好きなの!」

真っ直ぐすぎるそのストレートな告白。

正直、胸にグサリと刺さった。

でも、俺の答えはすでに決まっている。

俺はあの日、あの時、あの場所で。誓ったのだ。


「悪いが、俺は恵梨香の気持ちには答えられない」


「それぐらい知ってるよー!」


「なら、どうして……?」


「諦めるってことを諦めたから」


「はぁ……?」


「ユウくんを好きって気持ちを隠して生きてるのが辛くなったから。何だか、今までずっとずっと隠して生きてきて苦しかったんだ。だから、今……ユウくんに好きって言えて……とってもスッキリした。にひひ」


恵梨香は笑っていた。好きってことを言えたことが本当に良かったみたいなふうに。

彼女の笑いに誘われるように、俺も一緒に笑ってしまった。

とってもおかしくて。振られてしまったのに。

笑っている彼女が何だかおかしくてさ。


「諦めることを諦めるって言われても……俺は姫乃一筋だぞ」


「それはどうかな?」


「それはどうかなって言われてもだなー」


「ユウくん、人の気持ちって変わるんだよ。時間と共に」

その言葉はとても含みがあるような言い方である。

それに重みもあった。そして彼女は新たな言葉を紡いだ。


「だからね、ユウくんがわたしを世界で一番好きだって言わせてみせるから!」


新手の告白か、何か。もしくは何かの予言か。

俺は女の子に生まれて初めて告白的なものを受けてしまった。


「一体、それは何だよ」

「予言?」

「予言だったら、困るって」

「困るのは姫乃ちゃんだけ」

「お前なー。友達の彼氏を奪う宣言をしてるって、友達としてどうなんだよ!」

「うーん。許されるでしょ。それに姫乃ちゃんはユウくんが一番幸せになれる方を選ぶと思うから。つまり、わたしとユウくんの結婚に賛成するってことだよ!」

「あのなー。結婚とか考えてないからな」

「いやいや、すぐに考え始めるって! 新婚旅行はどこにするー?」

「まだ結婚とか早すぎるから!」

「まだってことはしてくれるんだね。やったァー」

「これは言葉のアヤだ。別に気にするな」

俺は恵梨香を置いて、部屋へと戻る。

それにしても……恵梨香の唇って甘い味がするんだな。

それにジャスミンの良い匂いがしてきた。ってか、今まで幼馴染としてか思ってなかったけど、恵梨香って結構可愛いよな。

それに、俺にいつも優しくしてくれるし。

って、俺は何を考えているのだ。

ヤベェー完全に恵梨香のことを考えてしまう。

俺には姫乃がいるんだ。俺が愛してるのは、姫乃だけ。


「ちょっと待ってよ!」

恵梨香に呼び止められ、俺は後ろを振り返る。

次は何も食らわないように、唇を片手で隠しておいた。

だが、その心配は全く必要なかったようだ。


「ユウくん……わたしは本気だよ。わたし、本気でユウくんのこと好きだから」


「あぁーそれはもう良いよ。もう、分かったから」


「ユウくんはさ、わたしのこと……どのくらい好き?」


「どのくらい好きって言われても……そんなの分かるわけないだろ」


「わたしはね、ユウくんが世界で一番大好きだよ。ずっとずっと一緒に居たいと思っているし、そのね、わたしね。ユウくんの子供を産みたいとも思ってるから」


「えっ?」


「わ、わたし本気だから!」


恵梨香はそのままリビングへと戻っていくのであった。俺の頭の中はもう真っ白だ。


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