お見舞い その3

「か、カツ丼……美味しそー」

「レナ、先に食べようとしない! 手を合わせてからよ!」

「はぁーい、分かってるよー」

「それと姉さんも……」

「仕方がないだろ。とっても良い匂いがするのだ。そんなことを言いながらも紗夜ちゃんだってヨダレが……」

「よ、ヨダレ……べ、別に付いてなんかないじゃない」

「こ、これは本当に美味しそうだな」

テーブルに並べられた五つのどんぶり。

皆、自分の分をじっと見つめ、食べたくて食べたくて仕方がない様子である。

無論、俺も早く食べたい。

「恵梨香。もう食べて良いか?」

「良いよ。食べても」

「ヤッタァー。では、恵梨香に感謝して」

「「「「「いただきますー」」」」」


まずは口にカツを放り入れる。

味が染み込んだカツとたまご由来の味が口内に広がり、幸せな気持ちになる。

何より、味が多少濃ゆめということもありご飯が進む。

他の人たちも幸せそうな表情で味を噛み締めていた。


「やっぱり、恵梨香が作る料理は美味いな」

「ええ……やめてよ。改まって」

「本当だって。正直、恵梨香の料理ならいつでも食いたいっていうかさ」

「……ほ、本当?」

「割と真面目に」

「じゃあ、わたしがお弁当を作ってあげようか? 前みたいに」

「……アリだな」

「何が、アリだなよ。真中、アンタには姫乃ちゃんがいるでしょうが!」と紗夜が指摘してきた。

「まぁ、ワタシだって毎日食べたいと思うけど」

「そうだよねー。紗夜ちゃんはお姉ちゃんが作るお弁当を毎日食べるので精一杯だもんね。本当にお姉ちゃんは嬉しいよ。ありがとう、紗夜ちゃん」

どうやら真梨先輩が二人分を作っているらしい。

意外と真梨先輩って料理とかできるんだな。ちょっと意外。


「そうだよね……ゆうくんには姫乃ちゃんがいるもんね」と恵梨香が寂しそうに呟いた。

「まぁー姫乃が作ってくれるけどさ、俺は恵梨香の料理も食べたいっていうかさ。何かさ、恵梨香の料理は人を幸せにする力があるっていうかさ。やっぱり、美味しいものを食べたい気持ちって誰にだってあるだろ?」

「何だか、その言い方。姫乃ちゃんの料理はまずいみたいに聞こえるよ」

「いやーさ。姫乃の作る料理も相当美味いぞ。でも、恵梨香の料理は俺の胃袋を完全に掴んでるっていうかさ」

「…………それはそうだよ。だって、わたしゆうくんのためにたくさん練習したもん。ゆうくんが気に入るような味を研究したもん」

「マスターの言っていること分かる。恵梨香、ボクのパーティに入らない?」

「レナ、恵梨香を巻き込むな」

「でも冒険に料理担当は必須」

「……もう、ゆうくんのこと知らない」

「ど、どうしたんだよ。恵梨香ー」

「もう良いです良いです。ゆうくんのバーカ。人が折角……」

何か恵梨香が呟いていたのは聞こえたけど、何を言っていたのかは聞き取れなかった。

「恵梨香ー。カツ丼におかわりはないのか?」

「おかわりはないよ。今日はみんな来てたし。そんなに食べたいなら、わたしのカツを一個あげるよ!」

「……いいのか?」

「いいよいいよ。はい、ゆうくん」

恵梨香が俺のどんぶりの中に一切れ分のカツを入れる。

「ありがとうな。本当元気になるぜ」

「すでに元気だと思うけどね」

「マスター……ボクの分のカツをあげる」

「真中……ワタシのカツもあげるわ。べ、別にアンタのためってわけじゃないから。ただ、ワタシには多すぎるっていうか……」

「ユウヤくん。私からもカツを……」


ということで、俺はカツを4切れ分もらってしまった。


「みんな、ありがとう! 俺、早く元気になるから!」

「当たり前でしょ。いつもうるさいアンタが寝込んでいたりすると調子狂うのよ」

「早く元気になってほしい。マスターが元気じゃないとボクも胸が痛い」

「ユウヤくん。キミに早く元気になってもらわないと、楽しくないだろ?」

「みんな、ゆうくんが元気になることを願っているんだね。本当にゆうくんは愛され者だね」と恵梨香がニコッと微笑んだ。

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