早退

風邪が治る様子は無く、ガンガンと上がっていく。

何より頭がクラクラする。何も考えたくはない。

こうして、保健室へとやってきて、俺は熱を計っているのであった。

「…………38.1度」

「ユウくん…………」と付き添ってくれた恵梨香が言葉を吐く。

「ウワァーこれは完全にアウトだね」

保健室の先生は赤色のブラウスと、黒のスカート。

それに上からは白衣を着ていた。本当に保健室の先生が感じがする。

「これって早退ですか?」

「うん、早退だね。それにしても夏に風邪を引くって余程の運の悪さ」

「はい…………ゲホゲホ…………」

「苦しそうだけど…………一人で帰れそう?」

「先生が送ってくれるんですか?」

「それはない。だって、あたし車の免許持ってないもんー」

「ですよねー」

どっちにしろ、一人で帰れというわけか。

「あーそうだ。恵梨香ちゃん、悪いけど真中くんが家に着くまで付き添ってくれない?」

「先生…………何を言うんですか。恵梨香、ダメだ。お前は授業があるだろ」

「大丈夫だよ、授業とか。それよりもユウくんの方が心配だし」

「で、でも…………」

「大丈夫大丈夫。だって、次の恵梨香ちゃんのクラスの授業は保健体育だからね。アタシの担当だから」とニヤリと先生は笑う。

「で、でも…………」

「なぁーに大丈夫大丈夫。あ、もしかして弥生先生からまた何か言われると思っている? それなら安心しなさい。アタシとなっちゃんは昔からの仲だからなんとかするよ」

「なんとかするって…………それよりも弥生先生と昔からの仲って本当ですか?」

「うん、本当だよ。それでアタシもこの学校の生徒」

「この学校の先生って元生徒だったっていう人が多いですよねー」

「そうだねー。それだけこの学校に思い出があるって人も多いのかも。あ、そうだ。逆に何かやり残したことがあるからここにまた来てるのかも…………」

「…………」

「…………」

「あ、何かごめん。ちょっと昔のことを思い出しちゃって。それで恵梨香ちゃん! 真中くんのことをよろしく頼むよ!」

「はい、任せてください!」

「このまま姫乃ちゃんから真中くんを奪っちゃいなよ!」

「奪いません…………」

「えーアタシ的には真中くんと姫乃ちゃんよりも恵梨香ちゃんの方がお似合いだと思うよ」

「えーそうですかねー? どう思う? ユウくん」

「どう思うって、俺は姫乃一筋だよ」

「真中くんも一途な男だねー。でも、ちょっとぐらいいいじゃん。多少は浮気とかもした方が刺激があって人生楽しいと思うよー」

「姫乃が不安になる表情を見たくないので」

「ヒューヒューかっこいいね。ねぇ、恵梨香ちゃん??」

「はい。とってもかっこいいです」

そして、続けるように恵梨香はポツリと悲しそうに言葉を紡いだ。

「ねぇ、先生言ったでしょ。奪いませんよ…………奪えませんよ」

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