水無月レイナは問題児?

生徒会室を出てから教室へと戻るとそこには、金髪ツインテールの少女の姿があった。

そして俺の顔を見るなり、助けを求めてきた。これは何かあったのだろうか。

そんなことを考えてみたものの、すぐに彼女が何故涙を流し、鼻水を啜っているのか分かった。

「今日も居残りか?」

「今日『も』というのは違う。今日だけ」

「そんなことを言いつつも最近はずっと居残りだろうが」

「うぅ……」

「それで何をやっているんだ?」

「……反省文」

「あ、反省文」

「それで、今回は何をしでかしたんだ?」

「別に何もやってない」

「何もないのに、わざわざ反省文を書かせられるわけがないだろうが」

「来たる日に備えて、戦闘訓練をしていたら……そのまま捕まってしまったのだ」

「なるほど。要するに、またレナが学校に持ってきてはいけない類のものを持ってきていた

わけか」

「マスターそれは仕方のないこと。カタストロフィはもうすぐそばにあるから」

「心霊とか未確認飛行物体とか生物の特集番組が最後に使うセリフだな」

「医学関連の番組とかでもあるね。貴方の危機はもうすぐに迫っていますみたいな」

俺は自分の座席に座り、レナの反省文に目を通してみることに。


『今宵、ボクは罪を犯してしまった。だが、それも全てはカタストロフィの危機を救うため

。これは本当に仕方のないことだったのだ——』

「まず、最初から違う。今宵って響きは、かっこいいけどさ」

「えへへへ、マスターに褒められた」

「全く褒めてないからな。逆に呆れているからな」

特に反省の色を全く見せないところとか。

「ヤッタァー、マスターに認められた」

「呆れていることを認められたと考えるのはポジティブすぎると思うぜ」

「それより、どう? ボクのリフレクションは?」

何だよ、この反応は。堂々として、褒めて褒めてと言って欲しい子供みたいな表情で見られてもなぁー。

「ふざけているようにしか見えない」

「……マスター。これはふざけてなどないよ!」

「これをふざけてないと言えるその価値観が凄い!」

「ヤッタァー。また褒められた」

両手を高くあげ、喜びに酔いしれている。

後から、もっとこっ酷く怒られる運命であることは間違いない。

俺は一応、彼女に助け船を出したぞ。でもそれを見捨てるから悪いのだ。

「それよりも……マスターは何故ボクのところへ? もしかして、ボクのリフレクションの手伝いをしてくれるの?」

「真梨先輩の手伝いというか、色々と相談っていうか。まぁ、それで今、教室に戻ってきたところ」

「なるほど。彼女がいない間に隠れて、密会と」

「密会じゃないから。一応、了承を得てるから!」

「でもさ、あのおっぱい星人がマスターを追いかけてきてたけど、そのまま無視して走っていったよね?」

「う……それは」

「もしかしてマスター的におっぱい星人には飽きた?」

「そのさ。おっぱい星人って、姫乃のことを言っているのか?」

「うん。そうだよ。あ、マスター的には、おっぱい星人っていうより、おっぱい性人の方が伝わりやすかったかな?」

「……ノーコメント」

「あまりこんなことを言いたくはないけどさ。マスター。一応、マスターの昔の女であるボクの立場からの意見としてだねー」

「おい、いつからレナは俺の昔の女になったんだ!」

「それは当然だよ。ボクはマスターの弟子兼元カノだからね!」

「付き合った記憶が一切合切ないのですが」

「またまた、面白い冗談を。ボクとマスターはこの腐れちまった世界を変えるために、一夜を共に過ごした仲だからねぇー。あのときの迸るような熱い感情をボクはまだ忘れることはできないよ。今も瞼を閉じれば……そこにはマスターの黒くて逞しい銃が」

「もう、やめて! これ以上、黒歴史の話をするのはやめて!」

「ボクはもっともっとマスターの武勇伝を広める必要があると思うんだ」

「本当にやめてください」

「どうしたの? マスターそんな青ざめた表情をして」

「今後の学園生活を考えて怖くなってきただけだ」

「マスター。安心して! ボクがいれば大丈夫。ボクは絶対に守るから」

逆に一番の問題はレナだよとは口が裂けても言えないな。

こんなにも元気一杯で俺のことを考えてくレル女の子のことをさ。

「それで、元カノであるボクの意見を言うに、あのおっぱい性人は危険だよ!」

もう元カノであることに関しては何も触れないことにしよう。そうしよう。

「どこが危険なんだ?」

「べったりしすぎ」

「まぁ、それは一理あるな」

姫乃って付き合い始めてから今まで以上にベタベタになってきたというかさ。

休み時間の度に、俺のところに来るようになったし。

それに授業中もずっと俺の方を見てるというか。視線を感じるし。

まぁ、愛されてるーというのは分かるのはありがたい話なのだけど。

「それに了承性ってちょっと怖い」

「え? 何が?」

「だから何かをするときはあのおっぱい性人に一言入れてからじゃないとダメってことでしょ?」

「でも、一応断りを入れておかないとさ。姫乃がうるさくて」

「完全にマスターって尻に敷かれる男だね」

「最近、いつにも増して姫乃が頼もしくなったというかさ」

「もしかして……マスターすでにやった?」

「すでにやった? どういう意味だ?」

「だから……身体を重ねたかって聞いてるの。普通、女の子にこんなことを聞いちゃダメ」

「ええと……何を言っているのかな? レナ」

曖昧な笑みで適当に誤魔化すことにした。

「本当ににぶちん! セックスしたかって聞いてんだよ!」

何故か、理不尽にキレられた。

「ええとだな……何を説明すればいいのやら」

「説明するほどにやったの?」

「違う! あのなー元々、最初から気づいていたっつの。でもあまり聞かれたくなかったから適当に流していたわけ。おっけー?」

「最初からわかってたけど、ボクの口からセックスという単語を聞きたくて適当に流していたというところまではおっけー。それとボクのことを愛してるって言って、ボクがあとは了承するだけだね♪」

「どこまで話を飛躍させる! それと俺はレナに告白してないから」

「で、やったの? やってないの?」

何、このキャバクラに行ったか。行ってないのか。

問われるやつの2倍3倍増しの質問コーナー。

「やってない」

「ふぅーん。そうなんだぁー」

「何だよ、その反応は。全く信じてないみたいな」

「それは信じるわけがないよ。だって、マスターってアイツと一緒の家に住んでるわけでしょ?」

「まぁーそうだけど」

俺と姫乃が同棲していることは、一部の奴らが知っている。

でも一般生徒は知らない。というか、もしもそれがクラスの男子達に知られたら……俺は嫉妬を買われて殺される。

「でもな、俺と姫乃は健全なお付き合いしかしてないよ!」

「ふーん。なるほど。マスターの鼻がピクピク動いていないことを察するに、これは本当のようだね」

「ええ? 俺って嘘をつくと鼻が動くのか」

「他にも色々とマスターの嘘を見抜く方法はあるんだ。ボクは、マスターとの付き合いが長いからね」

でも、それはお互い様である。俺だって、レナが何を考えているのか大体分かるからな。

「まぁーこれでマスターの聖なる剣が守られていることが分かって、ボクは安心したよ」

「ただの下ネタじゃねぇーか」

「じゃあ、ちんちんって言った方がいい?」

「隠す気は無いのな。それより、レナって下ネタとか余裕なのな」

「ふー。何を今更だよ。ボクはこう見ても、何度も何度も深層ウェブに入ったことがある住民だよ。だからね、ちょっとやそっとの下ネタで動揺する側では無いのさ」

「これは頼もしいのか。ただのど変態というのか。俺は何て言えばいい?」

「とりあえず、俺はキミをずっと愛してると言えばいいと思うよ」

「それは却下」

「じゃあね。笑えばいいと思うよでいいと思う」

「水無月……」

「身体がぽかぽかする。マスターと一緒にいると身体がぽかぽかする」

「はいはい。もう、エヴァごっこは終わりだ」

「おっとっと。これ以上は、もう口を開かない方がいいぜ。深層ウェブの世界は闇が深いからなー」

何だよ、この芝居がかったセリフは。それと俺はもう何も言ってないんだが。

というか、無視無視。

これ以上、レナと話してたら姫乃に怒られちまう。

俺には俺の帰りを待つ愛する人がいるのだ。

少しでも早く家に帰らなければ。

「もう、俺は帰るからな」

「裏切り者ぉぉぉぉー置いてかないでぇー」

レナが俺に擦り寄ってきた。無駄にコイツも胸が大きいんだよね。

「分かった分かったから。じゃあ、それは書き直しだ」

「嫌」

「分かった。もう帰る」

「ううー。待ってマスター」

教室を出ようとする俺を止めようと、後ろから俺に抱きついているもののそのまま引っ張られている状況。ちょっとラブコメっぽくていいなと思ってしまった。


「はぁーそれはいつまでに提出なんだ?」

「うーん。とりあえずは今日まで」

「そっか。それは頑張れよ」

「ええ。ちょっとだけ待って!」

「まだまだ文字数が足りないだろうが?」

「こういうのは文字で伝えるじゃなくて。行動で示すものなんだよ!」

「屁理屈だが……言っていることは正しいかもな。幾ら文字の中で反省の色を見せたところで行動に移せないと意味がないからな」

「うんうん。そうだよそうだよ!」

その後、レナは反省文に大きく『Q.E.D ボクは悪く無い』と書き込んだ。

「ふーボクの意見がしっかりと述べられており、これなら先生にだってしっかりと伝わるはずだね。ボクの気持ちが」

それは伝わるだろうな。俺だって、お前のバカさ加減がとっても分かるぞ。


ウキウキ気分のレナと共に弥生先生の元へと向かった。

生徒指導担当の先生って色々と大変だな。特にレナみたいな生徒の扱うのとか。

その後、レナが説教を食らったのは言うまでもない。

それと何故か俺もとばっちりを受け、先生の雑用をさせられる始末。

何だよ、この理不尽。

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