食事、お風呂、それとも……姫乃?

 「ただいまー」と自宅へと帰宅。


 すると、そこには制服にエプロン姿の姫乃の姿が。


 「食事、お風呂、それとも……ヒ・メ・ノ?」


 「食事でお願い」


 「むむー。ユウくん、酷いよ。いつもいつも姫乃だけは選ばないなんてー!」


 「逆に選んでほしいわけ?」


 「まぁーたまには……ね」


 「でもお腹が空いてるし」


 「じゃあ、姫乃を食べてみては?」


 「姫乃を食べるって……」


 「美味しいと思うけどなー。最近、結構肉付きが良いし」


 姫乃……自分から誘ってくるとは。


 それに最近一段と可愛くなったと思う。


 恋の力ってやつなのだろうか。というか、俺が意識しすぎてさらに可愛く見えるだけなのか。

 まぁ、東條さんは今までの数倍、可愛い。


 「でもさ、流石にダメだって。俺達、まだ高校生だし……万が一のことがあるかもしれないじゃん」


 「万が一のこと……? 例えば?」


 「赤ちゃんが出来ちゃったみたいな……」


 「えええええ、えええええ……ユウくんは変態さんです。わ、私……そんなつもりで言ったわけではないです」


 「えっ? でも姫乃を食べてみてはって……」


 「そ、それは私が、今から指を切り落とすからそれを調理して食べてみてはという……」


 「辞めろ。それだけはやめろ。いいな、それだけは絶対にやめろ。それはもう狂気だから」


 「で、でも……ユウは私の髪の毛入り玉子焼きを毎日毎日美味しい美味しいって言って食べてるよ」


 ん? 今何か、変な声が聞こえてきたけど無視無視。


 「今後は、食事、お風呂、それとも、わ・た・しというのはやめなさい。というか、もしもわたしを選んでいたら、本当ただごとでは済まないから」


 「ちなみにさっきの全部冗談です」


 「それは安心した。特に髪の毛入り玉子焼きの部分」


 「それはもう卒業しました。今のブームは私の唾液入り玉子焼きが主流です」


 「もうやめてください」


 「あ、それよりもユウ!? 今の時間帯まで何をしていたんですか? 浮気ですか?」


 そのさ、包丁を向けるのやめて。

 怖いから。それに瞳がコスモブラックになってるから。完全にヤンデレモード入ってるから。

 それにしても付き合い始めてから、姫乃ってかなりヤンデレ化が進んだと思うんだけど。

 でも愛されてるって思えるから、安心……なのか?


 「違う違う。今日は先生の手伝いがあって」


 「なるほど。それなら安心です」

 何だかほっとしてるようだ。先生には絶対的信頼でも置いているのだろうか。


 「先生はもう年増だから……眼中(敵)じゃないです」


 理由が最低だった。それにしても毒舌度が上がってる。


 「あ……もしかして、ユウは熟女好きですか?」


 「先生はまだ熟女じゃないからな。まだ若いから」


 「ふーん。先生と淫乱行為に及んでいたと教育委員会に報告しなくてはなりませんねー」


 「あのさ、姫乃」


 「どうしました? ユウくん」


 「重い」


 「重い? 最近、体重も減らしたんですよ。幸せ太りするのもいけないなって思って。ユウくんの為に、綺麗になろうと思って、必死に努力してるんですよ」


 「うーん。俺は素の姫乃が好きっていうか……もちろん、今の姫乃も好きだけど……最近は色々とやりすぎかなって」


 「やりすぎとは?」


 「そのさ、俺と他の女の子が喋っていると話に入ってくるみたいな」


 「彼女として当然です」


 「おはようのちゅー、行ってきますのちゅー、おやすみのちゅーは流石に辛いかなって。それに加えて、昼休みにもちゅーを入れてくるのは……」


 「愛を確かめるためには当然です」


 「それに加えて、寝る時もお風呂も一緒。何だか、介護みたいだなーって思ったり」


 「私はペットですから。ご主人様に仕えるのが仕事です」


 「はぁー。この際はっきり言うけど……姫乃、やりすぎ」


 「で、でも……ユウは色んな女の子にモテてるから心配で……自分が愛されてるって確認しておかないと胸がキュキュっと締め付けるのです」


 「何を言ってるんだよ。俺と姫乃にはこれがあるだろ?」


 そう言って、俺はシャツのボタンを外して、四葉のリングを見せる。これが俺と姫乃を十年以上繋いだ証。


 「は、はい……。で、でも……これだけでは嫌です」


 「家でイチャイチャしてるだろ。それだけじゃ駄目なのか?」


 「はい。全然足りません。学校でもイチャイチャしたいです。正直、もっともっと学校でユウとあんなことやこんなことを、グヘヘグヘヘグヘヘ」


 途中から完全にニヤつき始めてしまった。

 良からぬ妄想をしているのだろう。


 「で、でもなぁー。学校でイチャイチャと言っても、監視の目が多いし……。それに」


 「それに?」


 「ちょっと恥ずかしいかなって……」


 「あのですねー。ユウ! 私とユウは彼氏彼女の関係なのです。だから学校でも家でも、どこであろうとイチャイチャしてて当たり前なのです」


 「まぁ、たしかにそうだよねー」


 「そして、私以外の女の子達に私こそがメインヒロインであることを見せつけてあげたいのです!」


 「要するに狙いはそういうことだな」


 俺と姫乃は付き合っていることを公表している。

 だが、学校では極力イチャつくカップルではない。

 だからこそ、他の女の子が俺の元へ寄ってきており、それを姫乃は気に食わないらしい。


 「でもさー、姫乃さんや。俺にも女の子の友達というのが……ほしいわけで」


 「要らないです。どうせ、セフレになるのがオチです。それに浮気の原因は、女友達からというのが多いらしいです」


 「で、でもさ……。その、今までの人間関係を壊したくはないっていうか……」


 「まぁ、それは分かってます。私だって、本当は……で、でも今の私はユウだけがいれば、もう他の人達はどうでもいいかなって」


 「なぁ、姫乃。キスしよっか?」


 「えっ? ちょっといきなり過ぎです……」


 「姫乃は俺が信用できないわけだろ。だから、俺が姫乃のことを本気で好きってことが分かれば、多少は安心できるのかなーって」


 「は、はい。そ、そのよろしくお願いします」

 姫乃はギュッと目を瞑って、俺の方へ唇を寄せてくる。俺は彼女の顎をクイッと上げ、唇を交わせた。


 や、柔らかい。それに姫乃の匂いがする。

 柑橘系の匂い。ちょっと酸っぱい感じ。

 でも、ほんのりと甘くて……。


 「ねぇ、姫乃。俺のこと、まだ信じられない?」


 目元をうっとりとさせた姫乃は意地悪っぽく、呟く。


 「まだ……信じられないです」


 その後、彼女が根を上げるまで吸い尽くした。

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