第二章

メインヒロインの座は譲らない

 「ねぇー最近東條さんってかなり可愛くなったと思わない?」と黒髪ロングの女の子が呟く。


 その声に反応して、セミロングの栗色髪少女が

 「うん。最近とっても可愛くなってるよー」


 「はぁー」 「ふぇー」


 二人は同時に深く溜息を吐いた。


 「マスターから離れるです! このおっぱい女!」


 「むー。嫌です! ユウは私だけの王子様だもん。だから絶対に離さないもん!」


 「おいおい……レナも姫乃も落ち着いて……」


 「落ち着けるわけないです! 彼女として、他の女の子にユウを取られたくないもん!!」


 「それはこっちの台詞だ。このおっぱいおっぱい。ボクとマスターは前世からの魂の繋がりがあるのだ!」


 変な設定を色々と入れないでほしい。

 絶対に前世からの繋がりとかはない。


 「前世とかの繋がりとかないです! というか、そんなもの私とユウの間には関係ないです!」


 うわぁ、いつもの争いが始まってしまう。

 本当、いつもいがみあってるよなー。

 正直相手をするのが面倒だ。そんなことを思いながら、教室の隅に目線を送る。

 そこには顔を半分だけ出した生徒会長の姿が……。


 「許さんぞぉ許さんぞぉ許さんぞぉー、ユウヤくん。私という存在を蔑ろにして、他の女と付き合うなど……許さんのだ。絶対に許さぬのだぁー。ここで私と心中するか、切腹するか決めるのだ、ユウヤくん」


 うわぁ、今日も今日とて、真梨先輩が教室に来てる。

 それもハンカチを噛んで、目元から涙を流してる。

 ちょっと近寄りがたい。それにしてもオーラがエグい。アレは完全に人を殺さんとばかりだ。


 本当どうなってんだよ、俺の学園ラブコメ……。


 放課後。俺は、人生の先輩である弥生先生の所に行くことにした。もうね、最近の日常はカオス過ぎて、俺の手に負えるものではない。特に人間関係とか。

 東條さんと付き合っていることを公表してから、男子全員から敵扱いされてるし……。


 トントンと生徒相談室のドアをノックする。

 しかし返事がない。もしかして……先生はいないのか?

 

 「ん? 鍵が開いてる」


 俺は中へと入ることにした。


 「失礼しまー……」


 そこには机でうつ伏せになって眠っている先生の姿が。


 「すーすー」と可愛らしい寝息である。


 このまま寝かせると風邪を引くかもしれないな。


 仕方ない。毛布でもかけてあげるか。


 俺は近くにあった毛布をそっと彼女にかけてあげることにした。弥生先生は毛布を手繰り寄せるように取り、そのまま猫のようにうずくまってしまった。


 先生も仕事疲れなのかもしれない。

 最近は色々と忙しいと言っていたし。

 このままそっとしてあげたほうがいいかもな。

 でも誰かが来る可能性もある。

 だからここは俺が生徒達の相談になってあげるか。

 それにこれ以上、先生に迷惑はかけたくないし。

 こんなに気持ちよさそうな寝顔を見せられては、このまま眠ってる先生の邪魔は誰にもしてほしくないし。


 「んんっ……ここは……??」


 「先生。ゆっくり眠れましたか?」


 「こっ! これはぁ!? わ、私としたことが……生徒に手を出してしまったのか……。こ、これはまずいぞ。PTAが黙ってないぞ……。仕方ない、真中。ここで死んでくれ」


 「先生、落ち着いて下さい。俺と先生は一線を超えてませんから! それにここ普通に学校ですから!」


 「私としたことが、学校で行為に及んでしまったのか……二日酔いしてたのはたしかだが……って、本当だ。ここは学校だな。そして一つの部屋に男女が……。ま、真中。流石に寝込みを襲うのは最低だぞ」



 「し、してませんから! 俺は先生が幸せそうに寝ている姿を邪魔したくなくて」


 「なるほど。つまりは、私の寝顔を見て、今日のおかずにでもしようと企んでいたわけか。やっぱり、最低だな」


 「そんなことしませんよ!」


 「ははは、ただの冗談だよ。でも、ありがとう。キミとは二年間も一緒に居るからな。大体分かるよ。キミは私の為に、ここにずっと居てくれたのだろ?」


 先生は優しく微笑んでくれた。


 「あ、はい。そうです」


 「それで私が起きるまでここに居たということは……何か私に聞きたいことでもあるのか?」


 そこまで把握しているとは。先生って鋭いな。


 「まぁ、そんな感じです」


 「それでどんな話だい? 一応、私は教師であり、生徒指導部でもあるからなー」


 俺は東條さんと付き合い始めたこと。

 そして、他の女の子達の反応が変わったことを相談した。先生は俺が話を進めるにつれて、表情は険しく変えていった。やはり、深刻な内容だもんな。


 「なぁ、真中。お前、殺していいか?」


 「えっ?」


 「リア充は爆発しろ」


 何故か、その日はそのまま押し返されてしまった。

 でも先生はこんなことを言っていたな。


 「真中……キミというやつは本当に鈍感だな。皆、キミのことが好きだったのさ……」


 多少はモテていたという自覚は一応無きにしもあらずって感じだったけどさ。


 「あ、先生。二日酔いって何か嫌なことでもあったんですか?」と尋ねると、「死ね、裏切り者」とキツイ言葉を食らわせられてしまった。


 最近、何か嫌なことがあったんだろうな。

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