もしも学級委員がペットだったら その2

クラスメイトの女の子と一つ屋根の下。

そんな場所にいれば、のはラブコメに発展すると思っていた時期が俺にもありました。

しかし、実際はそんなことはない。

部屋の端にあるベッドにちょこんとお尻を乗せ、辺りをも見渡す如月。

「金目の物は何もないぞ」

「盗人じゃないわよ!」

「あ、そっか。それでどうしたんだ? 何だかよそよそしいな」

「あぁーもううるさい。緊張してるのよ! 初めて男の子の家に来たんだから」

「ってことは俺が如月の初めてを貰ったというわけだな」

「ねぇ、その言い方しないで! 気持ち悪いから」

「それで初めて男の子の家に来た感想は?」

「うーん。もっとゴミが散乱してるイメージだったかしら。だから心配して損した感?」

「そこは嬉しくなってくれよ。でもまぁー俺は掃除好きというか、割と綺麗好きなところがあるからなー」

「そこは姉にも見習って欲しいわ」

「ん? 今、何か言ったか?」

「……何も言ってないわ。あ、もっとティッシュ(意味深)が散乱してるイメージだったと言ったわよ」

「……ティッシュ? あのなぁー如月。お前は偏見を持ちすぎだぞ」

「まぁ、そうね。ごめんなさい」

あの如月が意外なことにあっさりと自分の非を認めた。

あれ? いつもの形成が逆転してる。

「ねぇ、お風呂に入らせてくれない?」

なるほど、お風呂に入りたかったからしおらしくなっていたわけか。

「嫌だと言ったら」

「それでも入る」

「そんなにお風呂が好きなのか?」

「好きよ。大好きよ。汗を掻いたらいつでも入りたい気分。休みの日は4回ぐらい入っているんだから」

「そんなに好きなら……分かったよ」

「はーい」


如月がお風呂場へと向かおうとする。俺はそれを追いかける。

というか、裸エプロンの影響でお尻が左右にぷるぷると動いてやがる。

どれだけの痴女なんだか。流石にまずいと思い、ブラとパンツだけは着せたから良いけど、何も身に付けてなかったら……と思うと鼻血が。


「ねぇーどうしたのそんな鼻を伸ばして……も、もしかして私の身体に欲情して……」

後ろを振り返り、いつも通りの敵意を丸出しにしてきた。

「欲情しないから!」

「……それって私には女の魅力がないってこと?」

そう言って、顔を真っ赤に染め、悔しそうに胸を両手で真ん中へと推し集める。

むーと頑張って、肉を集めようとしているが効果は全く無し。

「無駄だ。諦めろ」

「無駄って……そんな言い方をしなくても」

普段はもっと挑発的で色々とイチャモンを付けてくる奴だが、自分が責められるのは弱いらしい。

「あのなー。女性の魅力って、胸だけじゃないだろ?」

「えっ?」半泣き状態から少しだけ顔を上げる。

「千差万別って言葉があるだろ? だから特に気にするなって」

「ででも……女の子にとって胸が小さいというのは致命的な……」

「俺は気にしてないぞ」

「……新手の告白?」

「違う! 励まそうと言ってるんだよ!」

「励まそうと……やっぱり嘘ってことじゃん」

「嘘じゃない。あのなー男性のみんながみんな、胸に興味津々ってわけじゃないんだぜ?」

「と言いながら、裸エプロンを着せた奴に言われても……」

「まぁそれは仕方ないだろ。性癖なんだから」

「……もしかして、アンタって私のことをそんな性の対象として見てるってわけ?」

「はぁ? そんなことあるわけないだろうが!」

「アァーいやらしい。考えただけで鳥肌が立ってきた。授業中とかも、隣に座る私を見ながら今日のおかずはこれに決めた! みたいな感じにしてたってわけね!」

「そんなポ●モントレーナーみたいなふうには決めないよ。それにクラスメイトをネタには流石にできないって」

「それで私を性の捌け口にしている真中裕也被告人」

「被告人じゃないから! それとな、お前は一応俺のペットだからな!」

「……ペットって、ねぇ頭大丈夫?」

「いやいや、最初に言い始めたのはそっちだよね?」

「そ、それはそうだけど……もう、私お風呂入るから!」

何だよ、その言い方は。

でも、まぁーいいさ。ここからは完全に俺のターンだからな。


「ちょっと、何、脱衣所まで普通に付いてきてるのよ!」

「はぁ? 何を言っているんだ? お前はお風呂に入りたいんだろ?」

「そうよ。だからさっさとは出て行きなさいよ!」

「お前は俺のペットだろ。それにお前は自分自身で『お風呂に入らせてくれない?』と懇願するように言ってきただろ。だから俺は仕方なく……もう、本当に仕方なくだ。お前をお風呂に入れてやることにしたんだよ」

「……ねぇ、変態」

「言葉を慎みたまえ。俺はお前のご主人様だろ?」

「本当に最低ね」

「まぁまぁ、その拳を下ろさないか? 話はそれからだ」

「アンタと話すことはないわよ。この変態! どすけべ、エッチ!」

典型的なラブコメで、お風呂場から石鹸とかタワシとかたらいとかが投げられてくるシーンのセリフだな、これ。

「俺は一応嫌だと断ったんだがなー。それにも関わらず、『お前は入る』と言った。だから俺はお前の為を思って、ここまで来たわけだ。それにお前は俺のペットだろ? 違うのか?」

(何、コイツワタシを挑発してる! アァーもういいじゃない! アンタがその気ならこっちだって本気見せてあげるんだから!)

「あぁーもう分かったわよ! 一緒にお風呂に入ればいいんでしょ! 入れば!」

「自分の方から誘ってきた痴女のくせに、あくまでも自分は仕方なくという態度を取るのはどうかと思うがな」

「あぁーもう本当最低! 絶対に訴えてやるんだから!」

「誰に言うんだ? 日曜夜9時にでも頼んでみれば? 俺だっていつでも言っていいんだぜ。自らペットにして欲しいと懇願してきた痴女がいるって……それも生徒会長である、あの如月真莉先輩の実の妹。それにクラスの学級委員。これは完璧に終わりだな」

「や、やめてー。卑怯よ! そんなに人を脅して」

俺は如月の顎をクイッと持ち上げ、問いかける。

「なぁー如月。……いや、紗夜。お前、勘違いしてるだろ?」

「えっ……?」

彼女の声色が微かに震えており、覇気が入っていない。

「お前は俺のペットなんだよ。だから俺に口答えはできないわけだ。そこをしっかりと弁えているか?」

「……殺すわよ」

「殺せるものなら殺してみろよ」

彼女が俺に拳を向けてきた。しかし、それを意図も簡単に受け止める。

やはり男女差があるせいか、彼女の腕を掴めば、すぐに声をあげてしまった。

細く、柔らかく、脆い。女性の身体は傷つきやすい。

「い、痛い……」

「それはそうだろうな。力を入れているからな」

彼女を壁際まで詰め寄らせ、両腕を掴んで上げる。

彼女は屈辱と憤懣を募らせた瞳を向けてくる。

「紗夜……お前さ、興奮してるだろ?」

「してなどおらぬ」

「言葉遣いがいつもと違うぞ」

「……こ、これは」

「そうか。お前ってやっぱりど変態だな。人に対して散々言ってきたくせに本当は自分の方が興奮してるのかー。それもちょっと耳元で囁き、力を入れて腕を掴むだけで」

「……してなどいなぁ……」

「ほら、力を入れるとすぐに感じてるようだが? このドMがぁ!」

「してなど……おらぬ」

俺は彼女の長い黒髮を掻き分け、そっと口を彼女の耳へと近づける。

「ふー」と口づけを交わすかのように息を吹き替えてみる。

「あぁん♡」

如月は艶っぽい声を出し、そのまま床に倒れてしまった。

「あ、アンタ! とととと、突然何をするのよ!」

「悪戯?」

「ちょっと、本当気持ち悪い!」

「でもそんなことを言いながら可愛らしい声を立てていたよな?」

「そ、それは……くすぐったかったのよ!」

「もっとしてあげようか?」

「……いい。もう、ワタシ。今からお風呂入るから出て行って」

「俺はご主人様だから……」

「出て行って!」

二度目は威圧感があり、もう出て行くことしかできなかった。

流石にやりすぎた気がする。それに脱衣所を出る前の如月の悲しそうな表情。

やっぱり……色々と考えているのだろう。

布切れがスルスルと擦れ落ちる音が聞こえてくる。

だから俺は壁一枚向こう側から声をかけてあげることにした。

「なぁ、如月。さっきは悪かったな」

布切れの音が止まった。

どうやら俺の声は彼女にしっかりと届いているようだ。

「……うん」

「ちょっとやりすぎたと思ってる。一緒にお風呂に入ろうとかいうの」

「……それは本当にやりすぎよ」

「本当、ごめん……。俺、如月が身体に自信無いのを知ってて、誘って本当にごめんな・俺、お前の為にコーヒー牛乳を買ってくるよ。だから許してくれ」

「アンタ、本気で殺すわよ?」

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