第28話 呼び出し

 授業が終わり、そろそろ帰ろうと思っていた時だった。

 東條さんと共に如月が俺の元にやってきた。


 如月は東條さんの後ろに隠れて、いつもの生意気な感じが一切感じられない。

 何だかとてもしおらしくてこっちの方がかしこまってしまうぐらいである。


「そのね。ユウヤくん」


「ん? どうした? 東條さん」


 「その、如月ちゃんが話があるって」


 「どうしたんだ? 如月」


 「ほら、如月ちゃん。しっかりと言わないと」と東條さんに後押しされて、如月が照れ隠しの笑顔を見せながら、口を開く。


 「その今まで本当にごめんなさい」と深々と頭を下げる。

 プライドが高そうな如月がこうして頭を下げるという行為がどれだけ屈辱的なものだろうか。正直、あとから酷い目に合わないか心配である。


 「ワタシ、今まで真中を誤解してた。本当にごめんなさい」もう一度、頭を下げられる。


 「もう、いいって。俺も言いすぎた時とかあったし」


 「それでね。ユウヤくん。耳を貸して欲しいな」


 そう言って、東條さんが背伸びして、俺の耳元で囁く。


 「あのね、その今。ユウヤくんが持ってるパンツあるでしょ?」


 パンツ? あぁーあれか。レナに突然渡されたエロエロTバックか。


 「そのパンツね。実は如月ちゃんの物なの」


 「はぁ?」と声を出してしまった。


 「ん? 何かおかしいこと言った? もう一度言うよ。そのパンツは如月ちゃんのパンツなの」


 「え? このエロエロなパンツがぁ?」


 「そうだよ。意外だよねぇー。このままユウヤくんのことだから事務室に持っていくと思うけど、そのパンツを私に渡してくれないかな。私の方からこっそりと如月ちゃんに返しておくからさ」


 ***

 それから無事に如月に見つからないようにパンツを東條さんに渡すことができた。

そして東條さんと二人で帰ろうとしたときだ。


 ピーンポーンパンポーン♪


 『二年C組、真中裕也くん。弥生夏希(ヤヨイナツキ)先生が呼んでいます。至急職員室に来て下さい。もう一度、繰り返し——』


 「あー、悪い。東條さん。先に家に帰っていてくれないか?」


 「待っておきます。私はユウヤくんのペットです」


 「かなり長引くと思うよ。それに一度、東條さんの家に戻った方が良くないか? 今日、体操服とかなかったし。それに着替えとかも持ってきたと思うし」


 「うぅー。それって私はもう用済みだから実家に帰れということですか?」


 「違う違う。多分、色々と厄介ごとを任されると思うから」


 「その、いつも真中くんは弥生先生に呼ばれていますが、何をしてるんですか?」


 「先生の雑用的なことだよ」


 「わかりました。でも、ユウヤくん。私の頭を撫でて下さい」


 「え? なんで?」


 「レナちゃんの頭は躊躇無く撫でるのに、私の頭は撫でてくれないんですか? 実に不愉快です」と言いながら、頰をぷくっと膨らませる。


 「あぁ、分かった。分かった」


 俺は東條さんの頭をよしよしと撫でる。すると東條さんは「えへへ」と屈託の無い笑みを零した。


 「世界で一番幸せな時です。私、ユウヤくんに頭を撫でられるの好きです」


こうして、俺は職員室へ。東條さんは一度実家に帰ることになった。

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