第25話 体育

(主人公視点に戻りました)

 恵梨香と共に昼食を取り、教室へと戻る。そこには誰もいなかった。

 あ、そういえば次の授業って体育だったか。

 素早く体操服に着替え、体育館へと向かう。


 本日の体育はバスケをするらしい。普段は男女別でするのだが、体育の女性教員が居ないからという理由から特別に男女混合で行うらしい。


 別段、バスケが得意というわけではないがそこそこの自信はある。

 少しはかっこいいところを見せようと男子達は本気モードになっている。


 そんな奴らを片目に俺はスリーポイントシュートを決める。


 「よしっ!?」と一人でガッツポーズ。


 そこにレナが喋りかけてきた。


 「さすが、我のマスター。現在、力は封印されているも、未だ力は健在」


 中二病モードに入る時だけ、彼女は『我』と呼び、普通の時は『ボク』呼びになり。深い意味はないと思うが、ボクっ娘は悪くないと思う。


 「あ、ありがとうな。レナ」と素直に喜ぶ。


 彼女なりに凄いと言っているのである。でも素直に言うことができないから、このような遠回しの言い方しかできないのだ。


 「それとマスター。ボクと同じチームだった」


 「そっか。よしっ、頑張ろうぜ。他のメンバーは?」


 「ボクの弟子だよ」

 得意げにそう言って、レナもゴールに目掛けて、シュートを放つ。

 だが、ボールは力が弱く、そのままストンと落ちてしまった。


 チームは俺、レナ、それと小柄で眼鏡をかけた女の子であった。

 正直、俺は彼女との面識は一切ない。

 体育は元々男女別で行われるし、また他クラスとの合同授業ということもあり、見たことはあるが、あまり親しくない人が多いのである。


 「あの、俺の名前は真中裕也。普通に真中って呼んでよ。それで名前は?」


 「あ、あのぉ。わ、わたしの名前は……」

 たどたどしい声である。喋るのが得意な方ではないのかも。


 「わたしの名前は北野綾(キタノアヤ)です」


 「よろしく、北野さん」


 「はい! よろしくお願いします。真中くん。それとわたし、真中くんのこと以前から知ってます」


 「えっ? もしかして遅刻魔だとかそんな悪い噂でしょ?」


 「違いますよ。真中くんは時々本を借りに来てくれるので。あ、わたし図書委員なんです。それにレナちゃんのことも知ってます」


 そういえば、レナのやつ。北野さんのことを自分の弟子とか言ってたよな。


 「ふっ、ボクは図書棟にこもってるからね。これも全てはカタストロフィに備えるためさ。それにあそこには黒魔術に関する書物もいっぱい置いてある」


 絶対に黒魔術の本はない。それだけははっきりとわかる。


 バスケの授業は簡単な3on3。それにしても男子共は女子の胸やお尻に釘付けだった。

元々10年前まで女子校だったということもあり、男女比も1:3ぐらいの割合で男子が少ない。だからこそ、この学校を受験した理由と言う奴も居るぐらいだ。

 実際は少しばかり肩身が狭い思いをすることもあるが、女の子が多いということはそれだけ自分にも出会いが巡ってくることもあり、結構付き合ってる人が多いのが特徴的だと思う。

 それに一応、この学校は中等部があり、そちらの方に俺の妹である楓(カエデ)が居る。

 ちなみに中等部は全寮制であり、少し厳しめである。それに女子生徒だけを受け入れるとして、かなりの名門校と呼ばれている。

 ***

 3on3の結果はかなり好調だった。運良くかなりの割合で俺のスリーポイントシュートが炸裂。それにレナや北野さんも大活躍。意外と二人とも動けるタイプだった。


 中学時代に流行った異能力バスケ漫画を読んでから練習した甲斐があったと思う。

 それに一人で練習したのでドリブルとかはあまり上手にできないが。シュートだけには自信があった。次から次へ面白いように決まるシュート。

 自分でも夢のように感じてしまう。


 そして最終的に点数が高かったグループ同士が戦うことになった。

 相手は全員男子バスケ部で構築された、何か仕組んだとしか考えられないグループ。


 「ユウヤくんー!! 頑張ってくださいー」と東條さんの声援が聞こえてきた。その声に応えるように、少しでも頑張った。それに小さくだったが、如月の声援も聞こえた気がした。


 俺もレナも北野さんも全力で戦った。


 見事なパスワークでボールを受け取り、それを離れた場所から打ち込む。ただ、それだけを熟す。途中で俺へのマークが増えた。すると、レナや北野さんがゴール手前からシュートをしっかりと決める。

 そのおかげで俺へのマークは一人にするしかなくなり、接戦となる。やはり日頃の運動不足。それにメンバーが俺を除き、女子ということもあり、体力的にも限界が来てたと思う。


 それからはガンガン相手のゴールが決まっていく。今まで溜め込んでいた点数がひっくり返っていく。次第に俺たちのかかる声援は小さくなっていき、徐々に相手チームを応援する声が強まっていく。圧倒的な強さを誇っていたこともあり、弱かったチームが応援され始めるのだ。戦況は圧倒的に相手の追い風であった。

 それでも諦めるわけにはいかなかった。何故なら東條さんが必死に応援してくれているからだ。体育館の端の方でコソコソと話している人にとっては、たかが授業の一環で何をあんなにムキになっているのだと思われるかもしれない。


 でも、俺は勝ちたいと思った。少しでも彼女が喜んでくれるなら。


 試合終了三十秒前で点数が逆転されてしまった。点数差は二点。


 「真中―! 頑張ってー!」

 「ユウヤくんー! 頑張ってください−」

 如月と東條さんの声が閉め切っており、むさ苦しい体育館の中を駆け回るように響いた。


 時間帯的にこれが最後に一発になる。絶対に外すことはできない。

 俺はボールに力一杯込めて、シュートを放った。


 美しい放物線を描くようにゴールへと吸い込まれていった。


 その瞬間、ブザーが鳴り響く。俺たちの逆転勝利で本日の授業は終わった。

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