第24話 東條さんと如月ちゃん その4

 急いで二人は教室へと戻った。そこで体操着を持って、更衣室へと向かう。

 走るたびに、股の方がスースーするのを紗夜は感じていた。誰かに息を吹きかけられているような感覚である。なんだか、ちょっとエッチな気分になる。


 更衣室からは既に体操服に着替えたクラスメイト達が体育館の方へ移動していくのが見えた。

 更衣室に入る。そこには二人以外誰もいなかった。

 これは好都合だと思い、素早く如月はハーフパンツを履く。それにスカートで隠しながら履くので誰かにノーパンだと見破られるはずがない。


 「東條さん。ワタシたちも急ぎましょう」


 「ご、ごめん。如月ちゃん。私、体操着を忘れてきた……」


 それはそうだ。何故なら、東條姫乃は昨晩から真中裕也の家で暮らし始めたのだ。だからまだ体操服は東條家に置いているのである。


 「じゃあ、ワタシだけ……ノーパン体育か」


 「じゃあ、私はノーパン見学か……なんかちょっとエッチだね」


 二人は見つめあって、笑い合う。


そこで東條姫乃は思い出したと言わんばかりに口を開いた。


 「実はね。如月ちゃんはユウヤくんを誤解してると思うの。朝、ユウヤくんに怒ったでしょ? 盗撮してるとか言って。でもそれは違うの。ユウヤくんは全く悪くないの。むしろ、助けてくれたの!」


 「ん? それってどういうこと?」


 「ユウヤくんが遅刻ばっかりして、全く人の話も聞かなくて、鈍感さんだというのは重々承知だけどね。朝からの件は私がノーパンで困ってるところを助けてくれたんだ。

 他の人達に見られたら、色々とまずいだろって」


 「そ、そうだったの……」

 真中に悪いことをしてしまったと如月は思った。あんな決めつける言い方をしてしまい、それにあんな冷たい態度を取ってしまったのだ。

 学級委員として同じクラスの仲間をしっかりとみてあげることができなかった。


 如月は考えれば、考えるほどに今まで真中に嫌な態度を取っていたことを思い出す。

 素直に謝れば済む問題だが、如月はプライドが高く、素直になれない。


 「で、でも。東條さんはあ、あの真中にパンツをぐちょぐちょにされたんでしょ!」

 動揺する如月。如月は頭の中で東條さんのパンツの中に真中の指が入るのを想像している。無理矢理、手を出す男はやはり最低としか思えない。


 「はい。されましたよ。でもそれが彼なりの優しさだったと思います」

 だが、そんなこと別に構わないと思っている東條。何故なら彼女はそれを洗濯だと思っているからだ。彼が気遣って自分の分まで洗ってくれたと。


しかし、如月は完全に男女の中で行われる前戯的なものだと勘違いしていた。

ぐちょぐちょで優しさって、どういうことなのかを思案する如月。


 ——えっ? もしかして挿入するためにはほぐすってことかしら? というか。もしかして東條さんってドMなのかしら?


 カァーと頰が熱くなっていく。


 「私も最初は嫌だなと思っていたんです。やっぱり、その……男の子に見られるのって、恥ずかしいじゃないですか」

 東條が思う、見られるというのは下着である。男子に下着を見られるのは恥ずかしい。


 だが如月は完全に他のことについて思いを馳せていた。


 女の子の大切な場所ね。ワタシだって口から火が出るほどにそれは恥ずかしいわ。やっぱり真中と東條さんは大人の階段を登ったんだわ。


 クラスメイトが如何わしいことをしている。でもこのぐらいの歳になれば、そういうものも当たり前なのかしら?


 二人が行為を及ぶ姿を自然と想像し始める如月。でも何故か無性に胸が痛んだ。

 何度か家の中でちょっとエッチな動画をパソコンで見たこともあった。

 それなのに何故か今回は心が酷く痛んだ。胸が苦しくなった。

 何だろう。この胸の痛みは……今まで感じたことのない痛みだ。


 「あの。如月ちゃん、どうしたのそんなに顔を真っ赤にして、ぼぉーとさせて」


 「べ、別に何でもないわ。ワタシ、別に真中と東條さんが行為に及んだとしてても何とも思ってないから。全然大丈夫だから」


 口ではそういったものの、心に透明な棘が刺さっている気がする。

 それが何なのかは分からない。でも何か。何かである。


 「あの……如月ちゃん。何か勘違いしてない?」


 「勘違い?」


 「う、うん。私が話しているのは洗濯の話だよ」


 「え? 洗濯?」


 「う、うん。何か変なことを想像してなかった?」


 「そ、そんなことあるわけないでしょ。普通に洗濯だとずっと思っていたわよ。そのぐちょぐちょってのは?」


 「あぁーそれはユウヤくんが……私がお風呂に入ってる時に何の断りも入れずに洗ったんです。だから強引だなって」


 如月の中で全てが繋がった気がした。ノーパンなのは真中が東條さんのパンツを躊躇なく洗ってしまい、乾かなかったから。それで真中は東條さんの手助けをした。

 そういうことなのね。何か不自然なことがあるとは思っていた。解けないパズルが一気に完成への糸口を見つけたかのような清々しさである。


 でもアイツには悪いことをしたと思う。盗撮魔呼ばわりしたことは謝らなければならない。


 「じゃあ、私。先に行っておくねぇー」と言いながら、更衣室を出て行く東條。


 一人更衣室に残り如月はブラウスを脱ぐ。その時にふと思った。


 あれ? 何故東條さんがお風呂に入ってる時に、真中が出てくるの。それに東條さんのパンツは真中の家にあるとか言っていたわね。


 一体どういうことなのかしら?


 そ、それよりも早く行かないと。授業に間に合わない。学級委員としての尊厳がなくなってしまう。如月は急いで、体育館へと向かっていく。


 それから数分後。金髪ツインテールの女の子——水無月レイナ(通称レナ)が更衣室へ入ってきた。


 「カタストロフィの日はもうすでに刻一刻と近づいているのに。それなのに、人間共は何故気がつかないのか……」


 そこでレナは床にあるものが落ちていることに気づく。そしてそれを手に取った。


 「こ、これは——深淵なる魔のオーラを感じる!?」


 そして、それをビヨンビヨンと伸ばしてみた。


 「なぁ、こ、これは!? あの、遥か昔に封印されし、闇のトライフォース!?」


 レナが手に取ったのはどこからどうみても、パンツであった。

 そしてその持ち主は如月のものである。それにそのパンツは黒のエロエロTバックであった。

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