第21話 東條さんと如月ちゃん その1

(※今回からは東條さんや如月ちゃんに視点変更があります)


 真中裕也と西沢恵梨香が二人で仲良くお弁当を食べていた時、如月紗夜と東條姫乃も一緒に昼食を取っていた。


 普段はあまり絡まない二人であるが、如月の方から誘ったのである。

 全ては四時限目終わりにまで遡る。


 授業が終わり、直ぐに教室を出る裕也に対し、トイレでも我慢していたのかしらと紗夜が思っていると少し遅れて東條さんが喋りかけてきたのだ。


 「ユウヤくんはどこに行きましたか?」


 「さぁー分からないわ」


 「うぅーそうですかー」


 あからさまに悲しそうになる東條さん。


 そういえば、本日はずっと東條さんの反応がおかしい。それにずっと真中にベタベタしすぎだ。昨日までこんなことはなかったはず。


 もしかして彼女は何か彼に脅迫されているのかもしれない。

 そういえば、朝から階段で会った際も東條さんは何かを訴えかけるような瞳をしていた。多分、それは彼女なりのSOSだったに違いない。


 こういうクラスの秩序を乱す奴等は絶対に許せない。

 まずはあの男が何を東條さんにやったのか、聞き出さなくてはならない。


 「その東條さん、今日はワタシと一緒に昼食を食べないかしら?」


 「ダメです。ごしゅ、あ。その、ユウヤくんとお昼を食べようと思っているので」


 5分ぐらい裕也が教室に戻ってくるのを待つも、帰ってこないので紗夜の方から提案してみる。


 「もしかしたら学食にいるかもしれないわよ」


 こうして、紗夜と姫乃は学食にて一緒に昼食を取っているのだ。


 「東條さん。最近のマイブームとかある?」


 まずは関係性を深めてからだ。それからちょっとだけディープな話に持っていけばいい。


 「最近ですか……」

 少し困ったような表情である。やはり彼女は趣味に走れないほどに、あの男に何か弱みでも握られているに違いない。


 ここは一旦、話題を変えるべきね。


 「あぁ、東條さんの好きなものとかでもいいわよ」


 「そうですねー」と悩んだ後、直ぐに口をもう一度開いた。


「好きなものではありませんが、好きな人がいます」

 恥じらいを知った乙女のような瞳で、でも本当に幸せそうな笑顔を向けてきた。


 正直、意外だと思ってしまった。彼女はこの学校内では皆の憧れの的なのだ。

 そんな彼女が好きな人が居る。それを男子達が知ったら、阿鼻叫喚の嵐だ。


 「東條さんでも恋をするのね」


 「それはしますよ。私だって、普通の女の子ですから」


 頰を赤らめる彼女。

 多分、自分の思い人のことを考えているのだろうか。

 こちらの方までほっこりしてしまう。


 「あ、そうだ。如月ちゃんは好きな人とかいないんですか?」


 好きな人? うーん。誰だろうか。今まで考えたことはなかった。


 「うーん。どうだろう。分からないわね。その好きな人の近くに居る時って、どんな気持ちになるの?」


 「どんな気持ちですか? 胸がぎゅっと締め付けるような感じです。でもその苦しさは嬉しいんです」


 完全に恋する乙女だ。


 「そっか。ワタシ、そんな気持ちになったことないもの」


 そんなたわいのない話を続けた後、紗夜は本題を持ちかける。


 「その東條さん。ワタシに何か隠してることがあるわよね?」


 完全に東條さんの動きが止まった。表情が完全に固まってしまった。


 やはり、彼女はアイツに脅迫されているのだ。

 誰かに助けを求めていたのだ。

 ここは学級委員としての役目を果たさなくては。


 「ワタシは学級委員よ。自分で言うのもなんだけど、少しは力になれると思うの。先生とかに言いにくいかもしれないけど、ワタシなら他の人に絶対に口外はしない。

 だから安心して。ワタシに言ってくれないかしら」

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