第17話 ベタベタな東條さん

 如月紗夜を一言で表すのなら、正義という言葉が一番似合うだろう。彼女はどんな悪事だって許さない。だからこそ、俺が遅刻してることも、東條さんのスカートの中を盗撮しようとしたことも(と、如月が勘違いしてるだけ)、許してくれないのである。


 そのまま俺が否定しようと思った時には先生が教室に入ってきて、授業が始まってしまう。授業中には後ろの席に座る、レナがハンドガン二丁を没収されるぐらいのハプニングが起きたものの、これと言って特には何もなかった。


 強いて言うのならば、授業中に「クックック、ここまでカタストロフィの侵食が始まっていたとはな」と小さな不敵な声が聞こえてきたぐらいだ。

 授業中に東條さんの方を見てみると、顔を真っ赤にさせて、こちらをじっと見つめていた。恥ずかしくなったのか、顔を逸らす姿はとっても可愛くて、笑ってしまう。

 そんな俺の姿を如月は訝しい様子で一瞥し、何かを言いたげそうであった。


 どうにか授業が終わり度に、長い髪と豊満な胸を揺らしながら、東條さんがやってきた。

正直、べったりくっついてくる東條さんには困ったものだ。

 でも彼女は何とも思っている様子は見えなかった。完全にレナは東條さんの方を睨み付け、「マスターの敵。殺す」と言いながら、カバンの中に入っている予備用のハンドガンを取り出し、向けていた。人に向けるのは危ないので、俺が没収した。


 「マスターが言うなら仕方ない。でもボクはボクのマスターに危害を与えるような異分子は嫌いだ。それに奴は完全にマスターを誘ってる」や「女の子の魅力は胸の大きさでは決まらない」などとブツブツ呟いていた。

 ちなみに後者の方を言ってる際に如月が妙に納得しているようで頷いていた。


 ***


 三時間目が終わり、そろそろトイレに行こうと思い、席を立つ。如月が俺を睨み付けていたが、俺は完全に無視することにした。


 だって、目線が痛いし、それに口を開いたら何かを言われそうだったのだ。


 しかし、それにしても……それはやりすぎである。



 後ろを振り向いて、俺は自分の後をずっと付いてくる相手に向けて言葉をかける。


 「そのさ、東條さん。流石にそれはちょっとやりすぎだと思うんだけど」


 「えっ? 何がですか?」


 授業が終わるとすぐに俺の元へやってくる影響か、クラスの人たちも何か

がおかしいと思い始めているはずだ。そのせいか、かなりみんなの視線が怖いし、痛い。


それに俺が廊下に出ても付いてくるし。


 「だからその……ちょっと不自然すぎないかな? ってさ」

 昨日まではあまり喋らなかったのに、突然ずっと近くに居るわけだし。


 「その迷惑ですか? 私はペット失格ですか? 捨てるですか?」

 東條さんが瞼に水滴を溜めながら、質問攻めしてくる。


 「そのさ、捨てることはないから安心していいよ。でもさ、ちょっとベタベタしすぎな気がするんだよね……」

 頰をかいてしまう。それにしても困ったな。


「だって、私はペットです。だから|ご主人様(ユウヤくん)に付いていくことは当然です」と胸を張って答える。


 胸のボタンが外れないかなとか思ってしまう自分が恥ずかしい。

 でもそんなことは起きるはずはない。


 「あのさ、東條さん。本当に付いてくる? 後悔しても知らないよ」と一応確認。


 「もちろんです! むしろ、私の側にずっと居て欲しいです! それにユウヤくんにもっと私を知って欲しい……」と頰を少しだけ紅葉にし、訴えてきた。


 「本当に? 嘘じゃない?」と再度確認。


 「はい! 嘘じゃないです」と拳を胸の前でグーにして、アピールしてくる。


 「……俺、今からトイレに行こうと思っているんだけど……」


 急に顔を真っ赤にして、あたふたし始める東條さん。もっと意地悪がしたくなった。


 「あのさ、東條さん。俺のそんなに見たいの?」と攻撃。


 見る見る彼女の顔が赤色に染まっていく。その姿が面白かったのでさらに追い打ちをかける。


 「それに東條さんって、俺に見てほしんだぁ〜」と追撃。


 今にも泣きそうなほどに羞恥の表情を浮かべた東條さんは


 「ユウヤくんは変態さんでーす」と言いながら、教室へと戻っていった。


 ちょっと意地悪しすぎたかな? でも可愛かったな。

 そんなことを思いながらトイレへと急いだ。

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