第14話 脅迫

 女の子と手を繋いで学校へ登校するというのは男子高校生なら誰もが一度は憧れたシチュエーションではないだろうか。


それも手を繋いでいるお相手が学校ではみんなのアイドル的存在——東條姫乃なのだ。


 一応、彼女は容姿端麗、品行方正、学業優秀なのだ。

 つまり、めちゃくちゃにモテるわけだ。だが、みんな知らないんだろうな。

 俺と彼女が両想いで、それに主従関係であるということに。


 ヤベェ、なんだか物凄くラブコメ的な展開じゃないか!?


 で、でも……。学校の男子共に見られたら、確実に殺されることだろう。

 あぁ、考えただけで怖くなってきた。


 ……それにしても、東條さんの手って温かいな。それに身体が近いからか、彼女からかなり良い匂いがするんだが。


 一応、昨日は彼女も同じシャンプーと石鹸を使ったはずだと思うんだけどな。



 「ねぇ、東條さん。どうして俺だったんだ?」

 どうして、俺の家にペットになりにきたのか。正直、意味が分からないのだ。

 家出するにしても、他にも彼女のことだから仲が良い人は沢山いるはずなのに。


 それにも関わらず、何故俺だったのか。それを昨夜は考えていた。

 だが、答えは見つからなかったのだ。だからこうして聞いているわけだ。


 「ん? どういう意味ですか?」


 「あ、なんでもない。忘れてくれ」


 聞こうと思ったが、別に今じゃなくても良いか。


 「あ、それより急いだ方が良くないですか? もう8時20分ですよ!?」


 残り10分で遅刻か。流石に東條さんまでを遅らせることはできない。

 「東條さん、走ろう!」と彼女の腕を引く。


 ***


 「……はぁはぁ。どうにか間に合ったみたいだな」


 「はい。どうにか間に合いましたね」

 東條さんは息切れ一つしてない。俺は結構息切れしてるのに。

 どれだけ万能なのだが。それに最終的には俺が腕を引かれる状況になっていたし。

 でもペットが元気に走り回り、それに付いていくのが主人の務めかな。


 二人揃って、校門を潜り抜けることができ、下駄箱へと向かう。やはり時間ギリギリということもあり、登校中の生徒人数は少なかった。

 だが、やはり生徒から見られるのは恥ずかしいものだ。


 「それよりももう手を離しても良くないですかね?」


 頰を掻いて、とりあえず相談してみる。


 「嫌です。離れたくありません!」


 あぁ、ほらさ。東條さんがそんなことを大きな声で言うから、みんなが見てるじゃん。

 それにコソコソ話をしてるし。何より、男共の視線が怖い。

 アレは完全に殺意の目付きだ。


 全く離してくれそうにないので対策を打たなくてはならない。

 そうしないと、俺の命がないかもしれない。


だから俺は彼女の耳元にコッソリと囁いてみる。


「ノーパンだということをみんなにバラすよ?」


「………………………………ユウヤくんは本当に意地悪ですね」


東條さんはポツリと呟き、俯いた。そして、みるみる顔を真っ赤にさせていった。

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