第13話 首輪とリード

 「はい。では、これをどうぞ。ユウヤくん」


 リードを手渡される。何故か今回も断る暇も無く。受け取ってしまった。

 でもこれってどこからどうみても、犬用のリードだよな。

 ちなみに茶色の革生地である。結構見た目は高価そうだ。

 というか、東條さんはどこからこんな商品を手に入れているのか、単純に気になる。


 「あ、あのさ。これってどういうところで買ってるの?」


 東條さんは目を大きく見開き、


 「も、もしかして!? ユウヤくんって、ペット願望ありですか!?」


 「そんなわけあるわけないだろうが!? 俺はSだ。S」


 「Sって奴隷(slave)のことですね!? ユウヤくんって見た目はそこそこ可愛らしい顔をしているのに、結構エッチですよね」


 可愛らしいとか言われるのはむずがゆいな。やはり、男の子としては可愛いよりもカッコいいと思われたいし。

 エッチだというのはもう認めるしかあるまい。でも普通の男子高生ならエッチなことが気になるって当然のことだと思うんだけど。


 それよりもSの意味を履き違えるので説明をしなければ。


 「サディストの意味だ!」


 「ユウヤくん……知ってます? 自分からSだと言い張る人って大抵ドが付くほどのMなんですよ」


 「その情報はどこの情報だよ」


 「経験上です」と一言添えてから、思い出したと言わんばかりに口を切る。


 「ちなみに、自称Sは童貞率も高いそうです。これはネットの情報です!」

 ニヤリとわずかに口角が上がった。

女の子の口から『童貞』という言葉を聞ける日が来るとは思っていなかった。


 「ネットの情報に踊らされてるだけだぞ」


 「じゃあ、聞きますけど。ユウヤくんって童貞じゃないんですか?」


 「……童貞だけど、何か文句でもあるのかぁ?」

 童貞って、別に恥じることではないと思うんだよね。それに高校生で童貞って普通でしょ。うん、普通だよね。

 自己暗示をかけて、慰めるしかない。


 「むしろ、そちらの方がいいです。ちなみに私も処女です」

 頰を緩ませて、ニコッと微笑んだ。


 「あぁ、もう分かった分かった」と顔を赤くして、話を切り替える。


 そっか。東條さんって処女なんだ。美人は非処女率が高いと言うけれど、そんなことはないな。もちろん俺は以前から東條さんは穢れ無き存在だと思っていたよ。


 「それでさっきの質問なんだが、どこでそんなの買ってるんだよ?」


 あんなグッズを買うって結構恥ずかしいと思うんだが。

 ペット専門店に行って店員さんから『あのどのような物をお探しですか?』と聞かれて、『自分用の首輪とリードをお願いします』など、言えるはずがない。

 絶対、店員さんも変な奴が来たと思うだろうな。


 「amagonです! スマホでポチッと押すだけで、簡単に購入できるので」

 人目をしっかりと気にするタイプだった。


 「そんなことより」と東條さんが一言添え、


 「早く、リードを首輪に」と急かしてきた。


 こっちにも心の準備がいるのに。って違う違う!

 何を俺は思っているのだ。女の子にリードを繋ぐって、そんなことできるはずがないだろ。

 

「さ、流石にそれは無理な気がするんだが……」と躊躇してしまう。

 それが普通の人間の判断だろう。首輪はまだ髪で隠れるからどうにかなるし、ちょっとしたオシャレ感覚だと思うけど、リードはね。

 それにリードを引いて、歩道を歩く勇気なんてないんだが。


「でも、私。リードがないと、逃げちゃうかもしれませんよ?」と悪戯な笑みを振りまいた。その笑顔はとても可愛かった。


 「それじゃあ」と俺は彼女の手を取り、握り締める。


 「こうすれば離れないでしょ?」と訊ねると、鳩が豆鉄砲を食ったように、東條さんは驚いていた。


 だが、すぐに彼女は気を取り戻す。


 「そ、その……恥ずかしいです。だけど、とても嬉しいです! 一生離れません」


 東條さんが飛び付いてきた。本当、可愛いなぁ。東條さんは。


 (ちなみに、リードは彼女の谷間の中にまた戻っていきました)

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