第10話 幼馴染

 西沢恵梨香。肩に届くか届かない程度の明るい栗色髪に、ぱっちりとした二重瞼。

 身長は女性としては低くもなく、高くもない平均ぐらい。

 でもしっかりと出ているところは出ている。多分、Cカップぐらいだと思う。


 「ん? どうしたの? 具合でも悪いの? 何だか、浮かない顔をして」と恵梨香は俺の顔を下から覗き込んできた。


 「実は寝不足なんだ」一応、事実を伝えた。

 でも一番の問題は部屋の方に、東條さんが居ることだ。それだけは絶対に見つかってはならない。だって、女の子を連れ込んでいるなどと知られたら、何を言われるだろうか。


 「そっか。それは残念だ。わたしも昨日はドラマとか見てて、全然眠れなかったよー。あ、それよりも酷いよ! わたし、昨日ずっとLIME送ってたのに! 無視しちゃってさ」


 ぷんぷんと恵梨香が俺への不満を漏らしてくる。


 「あ、昨日はちょっと色々とあってさ……」

 昨晩のことを思い出すと、鼻がヒクヒクしている気がするのは俺だけか。

 本当になっていたら、もうお嫁に行けない!(お嫁に行くことはないと絶対にないと思うけど)


 「そっか、それは大変だ。って、それよりも早く学校に行かないと遅刻しちゃうぞ! 遅刻魔くん!」と恵梨香がご親切にも忠告してきた。


 彼女は俺が遅刻魔だということを心配して、時々この家に寄ってくれるのである。

 本当に良くできた幼馴染だと思う。


 「遅刻魔は余計だ!」と恵梨香のデコを人差し指で突く。


 すると恵梨香は「テヘヘ」とベロを出して、微笑んだ。


 「ねぇ、それでさ。さっきからずっと気になっていたんだけど、この靴って誰の?」

 恵梨香がニコニコ笑顔で微笑んだ。この表情は怒っている顔である。


 う、このままではまずい。


 俺は後ろを振り向き、部屋を確認する。すると、ドアの端からジッとこちらを見つめる東條さんの姿があった。ちなみにまだ裸エプロンのままだ。


 「ねぇ、聞いてる?」と恵梨香が胸ぐらを掴んで問い詰めてくる。


 恵梨香は昔から俺が他の女の子とイチャイチャしたりすることを極端に嫌っているのだ。

 でもまぁ、気持ちは分かる気がする。俺も恵梨香が俺以外の男と楽しそうに喋っているのを見るのとかさ。


 「聞いてる、聞いてるって」


 「じゃあ、この靴は何!?」


 「え、えぇっとそれは……」と口ごもってしまう。


 何も思いつかなかったのだ。


 「あぁ、もういい!」と言って、恵梨香が靴を乱暴に脱ぎ捨て、家の中に入ってきた。


 「おい……恵梨香」と俺が呼び止める頃には、時既に遅し。


 恵梨香は首輪を付けた状態で裸エプロン姿の東條さんを見てしまったのだ。

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