第2話 褒めて欲しい!?

 現在、俺が住んでいるのは築22年鉄筋コンクリート式のアパートである。

 高校生のくせに親元を離れ、一人暮らしを始めているわけだ。

しかし、今日から二人暮らしを始めることになる。

何せ、俺にはペットが出来たのである。

それもクラスメイトの美少女というペットが……。

 東條さん(俺のペット)を自宅に上げ、短い廊下を渡って貰う。後ろを歩く彼女はキッチンやお風呂場、トイレなどがかなり気になっているのか、頭をあちらこちらと動かした。

 それはそうだ。なにせ、ここで彼女も住むのだから。

そして短く、狭い廊下を渡りきった先にはなんと8畳のワンルームがお目見えしている。


 「まぁ、ここが今日から俺と東條さんが一緒に住む場所だ。狭いかもしれないが、そこは我慢してくれ」

 「いやいや、大丈夫です」と彼女は畏まったように手をパタパタと左右に振る。

 「それだったらありがたいのだが。それとさっきのご主人様と言ったことだが……普通に真中とかユウヤとかで呼んでくれて構わないから」

 「で、でも私……これから一生ここに住ませて貰うのに」

 えっ? ちょっと待って。一生、ここに居るつもりなの?

 俺は高校を卒業したら、この家を出ていくつもりなのだが。

 「あ、勿論。ご主人様が出て行けと言えば素直に出ていくつもりだし、引っ越す際は一緒に今後も付いていきます! だって私はペットだから……」

 そう言って、彼女は首元を晒し、赤色の首輪を見せ付ける。

 「これは私とご主人様の証です。だから捨てないで」

 目元をうっとりさせ、彼女は首輪を大切そうに撫でる。

 それにどこか泣きそうな表情になっていた。

 一つだけ彼女が勘違いしていそうなことを先に注意しておこう。

 「俺は東條さんを捨てるつもりは一切無い。だから安心して欲しいし、それにペット化するつもりも無い!」

そうだ。俺が目指しているのは週刊少年誌に出てくるような主人公だ。

表上はペットにしないと言いつつも、裏ではしっかりとラッキースケベを狙うのである。

 「えっ? じゃあ、私は何をして、恩返しすればいいの?」

唯一の存在価値を否定され、生きる意味を見失ったかのように彼女は落胆した。

少し、大袈裟じゃありやせんか。

 「家事を分担するだけで良いんじゃないか? それに東條さんってテストで1位を取るほど頭良いから勉強を教えてくれたら嬉しいかなー」

「それだけで本当にいいの?」と言う表情を見せ、彼女は頰を微かに緩めた。

 「その、ご主人様ってしっかり、今までもしっかり見てくれてたんだ……」と東條さんは頰を赤らめ、うつむいた。そして感極まって、涙を流してしまう。

 アレ? 俺、何かやっちゃいました?

 「泣かないで。俺が出来ることなら何でもするから」

 「それじゃあ、頭を撫でてください。ご褒美です」

 「ご褒美? 何の?」

 「私がテストで1位を取り続けていることです。これも全部、ご主人様に私を知ってもらおうと頑張ったのです。そしてご主人様はしっかりと私を見てくれていました」

 一呼吸を入れ、彼女は言葉を発する。

 「だから頭を優しく撫でて、褒めて欲しいのです。それだけで私は幸せです」

確かに、東條さんは学年1位の才女である。

だが、今の状況と全く関係ないと思うのだが、褒めて欲しいと言うのならば褒めてあげるとしよう。

「東條さん。よく頑張ったね」と頭をそっと優しく、撫でる。

彼女の髪は本当に艶があり、美しかった。まるで極上の絹のようだ。

 「東條さんじゃ、嫌です。姫乃とお呼びください」とお代わりを頂戴された。

 「じゃあ、これは条件。俺も姫乃と呼ぶから、俺をユウヤとか、ユウヤくんとか呼ぶこと。特に学校に居るときは頼むよ。それともう一回おねだりしてごらん」

 「ご主人様は意地悪です」と不満を漏らす姫乃に俺は「違うでしょ?」と言葉を掛ける。

 姫乃は恥ずかしそうに、口を開いた。

 「ユウヤくん。私の頭を撫でて、褒めて欲しいです」

 「姫乃、よくできました」と、俺が彼女の頭をそっと撫でてあげると、屈託の無い笑顔を向けられる。

正直、その笑顔は反則だなと思った。

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