第一章

第1話【急募】クラスメイトがペットにして欲しいと懇願して来た時の対処法。

 時刻は23時34分。良い子は素直におねむの時間帯に「ピンポーン」とチャイムが鳴りやがった。

 ベッドに寝転がって、漫画を楽しく読んでいたのに一体誰がこんな時間に。

 そのまま無視しようと思っていたが、一向に止む気配はない。

 ちぇっと軽く舌打ちをしてから、俺は玄関先へと向かう。

 まずは敵情視察が大事だと思い、ドアスコープを覗いて見る。

 すると、そこには学校指定の紺襟で白いセーラー服に身をまとったクラスメイトの姿があった。ちなみに胸元には可愛らしい青のリボンがある。

 どこか困った様子で、そわそわしているようだ。

 でもどうしてこんなところに、こんな時間帯に。

 クラスメイトの東條さんが俺の家の前に居るんだよ!?

 何かの間違いかと思い、何度も目を擦って、小さな穴を覗き込む。

 しかしはっきりと彼女が見える。どうやらこれは幻ではないみたいだ。

 俺は恐る恐るドアを開けてみることにした。

 彼女はドアが開くと同時にパッと表情を明るくさせ、言葉を発した。

「本当にごめんなさい。こんな時間帯に……」

初っ端から頭を深々と下げられた。

 「大丈夫だから。頭を上げてよ」

 「あ、ありがとう」

ゆっくりと頭を上げる際に長い黒髮がぼわっと乱れ、右手で整えた。

 俺に見られているのを気にしているのか、彼女は目線を下に向けていた。

 もしかして恥ずかしがってるのか?

 「今、お礼を言った後にすぐにこんなことを言うのはどうかと思うけど……お願いがあるの」

お、お願い?

色々と募る思いがあるが、美少女のお願いとあらば、助けてあげるのが男の役目だ。

 「俺で良かったら、何でも言って。頼りになるかは分からないけど」

 「じゃあ、言うよ。絶対、絶対に他の誰にも言わないでね!」と彼女が念を押してくる。

それほどシリアスなお願いなのだろう。

俺だって、エッチな本の場所とかどこに隠せば良いのか分からなくなる時だってあるし。

 他の人にばれたくないことは誰だってあるものだ。

 「分かってるよ。誰にも言わない。二人だけの約束だ」

でも何故俺なのだろうか?

俺って、別に東條さんと特別仲が良いわけでは決してないんだよね。

 彼女は一呼吸を入れ、慎重に口を動かした。

「わたしをその……ペットにしてくれないかな?」

 大胆な言葉とは裏腹に身体をモジモジさせていた。かなり恥ずかしいことを言っていると自覚しているようだ。

 顔は真っ赤になっており、ツンデレヒロインならば拳の一発程度なら飛んできてもおかしくない。

 って、何を俺は冷静になっているのだ。

 「あの、東條さん。それってどんな意味なの……?」

 まずは状況を確認。話はそれからだ。

 「どんな意味もこんな意味もないよ。私をその……ユウヤくんのペットにして欲しいの!?」

 目を見開いて、必死に訴え掛けてきた。

 「東條さんを俺のペットに……? それって、東條さんが飼ってる猫とか犬とかを俺に預かって欲しいとかそんな意味じゃないよね?」

 「違うの。私を飼って欲しいの!?」

 そう言って、彼女――東條姫乃は夏服用のブラウスのボタンを上から外していく。

 「ちょっと、何をしてるのさ。東條さん!」

俺は自分の目を両手で隠した。でも隙間から彼女のふくよかな胸を見てしまう。

健全な男子高生なら女の子の身体が気になってしまうのは致し方無いだろう。

そんな俺のことなど全く気にする素振りを見せず、彼女はナイスバディな谷間から犬用と思われる首輪を取り出した。

 ちなみに猫型ロボットが道具を取り出す際に流れる『てれれれってれ〜』という効果音を口ずさんでいた。

 って、そんなことはどうでも良い。

 「あの、東條さん。それはどういうことなのでしょうか?」

 「言葉通りの意味だよ。この首輪で私をユウヤくんだけのペットにして欲しいの!!」

 彼女が俺に赤色の首輪を差し出してくる。何故か、俺もそれをすんなりと受け取ってしまった。

 「ペットにするってどういうこと?」

 「つまりはユウヤくんと一緒に住みたいってことだよ。私、結構料理に自信あるし、それに家事なんてちょちょいのちょいで終わらせることができるよ。だから二人で住めば、ユウヤくんにとってもかなりのメリットになると思うんだよねー」と自信有り気に説明してきた。

 ん、何だこの地雷臭は。この売れ残った40歳前半女性が合コンで男にかなり食いついてくるみたいな感覚は。

 「そんなの無——」

 俺の言葉を遮るように彼女が近づいて来る。

 「もしも、私をペットにしてくれるなら、そ、その少しだけならエッチなこともして良いよ」

 彼女の艶っぽい声が俺の耳元で響いた。

 言っちゃ、何だが。女の子には優しくしないとダメだ。

 別にエッチなことを早速して貰おうという気持ちは一切ない。

 ただ、女の子をこんな夜遅くに一人で家に帰らせるのも可哀想だから、一泊ぐらいなら許してあげようと思っているだけだ。

 全く、少しも、これっぽっちも俺はエッチなことなど考えてなんかいないんだからね!

 「その話、乗った!」俺は東條さんと力強く握手を交わした。

 多分、これは国同士のトップの握手よりももっと評価されるべきだと思う。

 「ありがとう。本当に助かった」と東條さんは肩を撫で下ろし、そのまま首元の髪をかき分けた。そのまま露わになるうなじに俺は釘付けになってしまう。

 何故こんなにも良い匂いが漂ってくるのだろうか。

「じゃあ、ユウヤくん。その首輪を私に着けてくれないかな?」

正直、躊躇う気持ちの方が強い。

 「お願い。私はあくまでもペットだから」

 どうしてもと彼女が懇願するのならば、致し方無い。

 女の子にこんな破廉恥なことをすべきでは無いと分かっているものの、腕が勝手に動いていた。

 首元にゆっくりと触れ、首輪を巻きつける。そして、キュッと締めあげる。

 「ああっ♡」と 彼女が少しだけ、苦しそうに声をあげた。でもどこか嬉しそうに聞こえたのは何かの間違いであると思いたい。

 「ごめん。ちょっとやりすぎたよね」

 「だ、大丈夫です。ご主人様♡ これから二人で幸せな生活を築きましょうね!?」

 東條さんは甘えたような口調で今後の未来を考えてくれていた。

その言葉を皮切りとして、俺——真中裕也と東條姫乃の主従関係が始まるのであった。

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