シモーヌ編 アリニドラニ村へ

そんなことも考えつつ水泳部によるホビットMk-Ⅱの捜索を見守る。すると、一時間ほどで二機とも発見できた。そして早々に引き上げを始める。これにより、人間の水難事故の場合でも同様の活躍ができるであろうことが確認される。前回のデータで水泳部も改良したし、今回はまったく問題は生じなかった。


<ホビット製造工場>でも水泳部を製造できるようにしていくし、より一層、様々な状況に対応できるようになっていきそうだ。


そして<移動電源>の方も、見た目にはそれこそ<満身創痍>という印象ではありつつ、アリニドラニ村へと到着した。と言っても、これまた斗真とうまを怯えさせるのも申し訳ないので村そのものには入れず、村がある丘の麓に設置して、井戸から水も取り、<小型火力発電所>として運用を開始する。これで、無線給電器をリレーしたり基幹ドローンをリレーしたりして光莉ひかり号から給電する必要もなくなった。


見た目にはボロボロで大容量給電にも不具合が出ていたが、それについてはそのままドーベルマンMPM五十九号機をメンテナンス要員として配し、修理を始めもした。五十九号機が見ている情報はそのまま光莉ひかり号のAIからでも確認できるので、故障個所を捉え、部品についてはオートジャイロで届けて対処。


さらには移動電源を囲うための建材も、輸送用ヘリで、作業用のホビットMk-Ⅱと合わせて届け、プレハブ状の小型火力発電所が完成した。


これでいよいよ、アリニドラニ村そのものを独立運用。鉄の生産拠点及び<実験場>の一つとして稼働してもらうことになる。


なにしろ、輸送ヘリで届けた石炭を基にコークスを作り、そのコークスを使って鉄を精製することで品質は格段に向上したしな。


実はその陰で、斗真とうまの成長も著しく、彼自身、自分が何をやってるのかかなり理解した上で鍛冶の仕事をこなしてくれていた。知能もすでに十二~十三歳程度のそれを獲得しているようだ。


しかも、


「ドラニ……これでいいか……?」


必ずしもスムーズではないものの<言葉>まで話し始めて、もう一人前の<鍛冶屋>と言ってもいいかもしれない。しかも、ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱらが使っている農具についても、他の仕事もあって鍛冶だけをやってるわけじゃない久利生くりうよりも多く分担してくれている。


朋群ほうむ人初の鍛冶屋>


の誕生だ。


「ああ、上等だ。さすがだな」


差し出されたスペイドの先を手に取り眺め、まるで息子の腕前を確かめた父親のようにドラニが応えると、斗真とうまの表情が少しだけ晴れやかな感じになる。


喜んでいるようだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る