シモーヌ編 頼りになる人材
こうして<心停止したレックスのコピー>については三日間の予定で治療カプセルによる生命維持と回復を図ることになった。いくらでも治療用ナノマシンを補充できる地球人社会でなら一年でも二年でも試すことはできるだろうが、新しく補充できるあてのないここでは、最大限の譲歩だった。
シオも、それは分かってくれた。
で、その一方で、<生きて救助された方のレックスのコピー>がどうしていたかと言うと、アリアンの中で俺達とタブレット越しに対面し、これまでと同じく状況を説明し、シオやシモーヌとも再会。
「シモーヌ、君もか……!」
自分だけでなくシモーヌまで二人になったことに驚きつつも現状を理解してくれた。さすがは惑星探査チームのリーダーだ。話が早い。
「レックス……」
シオが泣きながら彼の名を口にし、安堵する。しかし同時に、もう一人のレックスのコピーは生死の境をさまよっていたわけで、本当にどう感情を表せばいいのかわけが分からない状態だっただろう。
そしてそれはシモーヌも同じだった。しかもシモーヌに至っては、今では俺のパートナーだしな。なのに今さらレックスが現れるんだから、実にふざけてる。
とは言え、
「まあ、私はゆっくりと考える時間もあったからね……」
シモーヌとしてはもう『よりを戻す』気はなかったらしい。どろどろの<愛憎もののドラマ>であればここからぐっちゃぐちゃのメロドラマが始まるのかもしれないが、さすがに惑星探査チーム内でそんなことがあっては話にならないから、そういう風なドラマを演じるようなタイプはメンバーにはまずいないそうだ。
ただ、シオはな。レックスと会えなくなってからまだ日にちも浅いから、感情がかき乱されるのは無理もないだろうさ。
と同時に、これで彼女も精神的に安定するだろう。
「信じがたい事態だが、目の前の状況を見る限り、受け止めるしかなさそうだ」
レックスは落ち着いた様子でそう口にする。その上で、
「もう一人の私も、できれば助かってほしいものだな。互いの記憶に何らかの差異が生じていないかどうかを確認してみたい」
などと、<専門家>としての姿勢も見せてくる。
さらには、
「ああ…思い出したよ。確かに私は、あの不可解な存在の中と思しき世界で、シモーヌや
とも告げる。
これで頼りになる人材がまた増えたと言えるかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます