シモーヌ編 要救助者の検索

こうしてまたホビットMk-Ⅱを水没させることになってしまったが、今はそれに構っていられない。


しかももう一機は、クロコディアに振り切られてしまった。掴んでいた腕が折れてしまったようだ。


そしてクロコディアが猛然と迫る。


が、そこに、


ウォオーンン!


という独特の音を響かせて巨大な影が空中に現れた。アリアンだ。アリアンが間に合ってくれた。すると、突然現れた<怪物>に恐れをなしたか、クロコディアは慌てて水中に没し、姿が見えなくなった。


そこに高仁こうじんがワイヤーで降下。<レックスのコピーらしき人物>と五十九号機を同時に救出。アリアンが上昇して河から引き上げる。


この光景を見て、俺は、


『輸送用のヘリでも同じことができるな……』


と思って、輸送だけでなく救出にも使うことを考えた。そのための仕様も加えていこう。


だが取り敢えず今は、無事に救出できたことを素直に喜ぶべきだな。


しかし、ホッとしていた俺達に、<レックスのコピーらしき人物>は、


「もう一人いたようなんだが……」


高仁こうじんに抱きかかえられながらそう口にした。


「なにい!?」


ああ、これはいままでにも確認されていたことだ。あの不定形生物からは必ず一体だけが顕現するわけじゃなくて、二体三体と複数の人や動物が顕現する場合があると。


「アリアン! 要救助者の検索!」


久利生くりうが咄嗟に命じたのを俺が追認し、アリアンは水中用プローブを投下した。流れは激しいが、<泳いでいたレックスのコピーらしき人物>が救出された位置から、


『途中まで泳いでいたが力尽きて流された』


『最初からほとんど泳げずにそのまま流された』


等の想定をして、それぞれ推測される辺りに急がせる。すると、


「要救助者を発見! 意識がないようです」


アリアンが告げつつ機体をそこに向かわせる。さらに四百メートル以上下流だった。プローブもそこに急いで向かい、要救助者に取り付いた。


そしてバイタルサインを取得するが、呼吸も脈もない。非常に危険な状態だった。だから、先に救出した<レックスのコピーらしき人物>をアリアンの機内に収容すると後は中にいたホビットMk-Ⅱらに任せ、高仁こうじんは再びワイヤーで降下した。


アリアンも完璧に位置を合わせて、高仁こうじんの救助活動をサポートする。


これにより、ほとんど飛び込むような勢いで降下した高仁こうじんが、流される要救助者を直接掴み、プローブらも合わせて一緒に引き上げる。


だが、そうして引き上げられた要救助者は、


「え? レックス……!?」


「こっちも!?」


シオとシモーヌが声を上げたように、確かに<レックスのコピーらしき人物>だった。


そう。同時に現れた二人ともが、<レックスのコピー>だったんだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る