玲編 血縁関係

龍準りゅうじゅんが接近しています』


エレクシアがそう告げたように、龍準りゅうじゅんめいの縄張りに進入してきたんだ。なので俺は、


「エレクシア、龍準りゅうじゅんを追い払ってくれ」


そう指示を出す。今はイレーネもいるから頼みやすい。


「承知しました」


エレクシアは応えて、<危機対応モード>で現場へと向かう。


一方、めいはさすがに龍準りゅうじゅんが自分の縄張りに侵入したことを気付いていなくて、れいえいも、少し距離を取りながらも彼女の後をついていった。


そして住処までもう少しというところで、


警告アラート! マンティアンがめいに接近しています!」


イレーネが声を上げる。


「なにっ!?」


見ると、ドローンのカメラにマンティアンの姿。しかも、


「<龍然りゅうぜん>との血縁関係が推測される個体です」


と。


「くそっ! 他にもいたのか!?」


当然、<龍然りゅうぜんの子>が龍準りゅうじゅん以外にもいる可能性はあった。一応はそれも想定はしていた。だがそれがこのタイミングで現れるとか、間が悪すぎだろう。しかも、こちらの早期警戒網をかいくぐってだと?


隠密性が極めて高いマンティアンならではかもしれないものの、それにしてもだな。


「!?」


さすがにめいも余所者が入り込んでいることに気付き、身構える。その動きは、さすがに全盛期の頃に比べると劣るかもしれないが、ここ最近の様子からは想像もできないくらいに素早いものだった。


けれど、相手はそれをさらに上回っていた。一瞬でめいに迫りその腹に膝蹴りを叩きこむ。こいつも龍準りゅうじゅん並の格闘センスを備えているのが察せられた。


「ギッ!!」


めいが強烈な膝蹴りを腹に受けて前屈みになったところに、<龍準りゅうじゅんの兄弟らしきマンティアン>が、頭を振りかぶる。頭突きを食らわすつもりだ。


めいっ!!」


まさか、こんな形で最後を迎えるのか……!


もちろん、マンティアンとしてはごく普通の最後だ。老いて戦えなくなった個体は若く力を持つ個体によって駆逐される。それがマンティアンの世界だ。だからこれも、<あるべき姿>なんだろう。


だが……


<我が子>が殺されるところなど見たいとは思わない。


と、その時、画面内に何か白いものが飛び込んできて、マンティアンが頭を振ってそれを躱す。


れい!?」


そう、れいだった。れいが飛び蹴りを食らわそうとしたんだ。それは躱されたものの、さらにそこに、


えいも!?」


今度はえいが突撃。マンティアンを蹴り飛ばした。その隙に、めいは後ろに飛び退いて間合いを取る。


それに遅れること一秒足らず。さらにきゅう号機と拾弐じゅうに号機も駆けつけ、マンティアンの前に立ちはだかったのだった。


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