灯編 自慢

新暦〇〇三五年五月二十六日




そして、ビアンカと久利生くりうの<新米親>も、本当に頑張ってた。さらにそんな二人をあかりとルコアも支えてくれてる。


「どうだ? ケイン達は」


セシリアを通じてほぼ完全にケイン達の様子は確認できているものの、


あかりがどう感じているか?』


という点について確認するべく、父親として娘に問い掛ける。するとあかりは、


「どうも何も、元気いっぱいで私はな~んも心配してないよ。あの子らは頭もいい。セシリアやビアンカのことをちゃんと分かってるし見てる。セシリアとビアンカからちゃ~んと学んでくれてるよ」


まるで自分のことのように自慢げに胸を張ってそう言った。


地球人である俺とアクシーズであるようの間に生まれ、様々な兄弟姉妹達を見て育ったあかりには、そういう部分を察することができる感覚が身に付いてるんだろうな。これからここにできていくであろう人間社会の<先達>として本当に頼もしい限りだ。


でも念のために回りくどい言い方はせず敢えて訊く。


あかりとしても、ケイン達とは上手くやっていけるという実感が得られてるってことでいいんだな?」


そうだ。俺達の間に小賢しい<遠慮>はない。生きるか死ぬか、殺すか否かの踏み込んだ判断も、雑談レベルで話し合える。


「問題ないよ。危険な時には必要な対処をするだけ。家族のことだからね」


きっぱりと応えてくれるあかりは、俺なんかよりよっぽど優秀だ。


「分かった。判断はそっちに任せる。俺が必要になったら遠慮なく言ってくれ」


とだけ伝えた。ロボット達に最終的な命令を下せるのが俺だけだから、その時は躊躇なく決断できるように心構えを作っておく。あかりとビアンカと久利生くりうがいかに頼れるか、その三人の判断なら信頼に値するか、三人の判断を俺が改めて検証する必要はないということを確かめていく。


命令を下す時に、俺が躊躇しないようにな。現場がしっかりと判断をしてるのに、最後の決断を下す役目の俺が躊躇って足を引っ張りたくないし。


そんな大人達のあれこれなどまったく知る由もなく、ケイン達はすくすくと育ってる。今はもう、全員生肉だ。生きた土竜モグラとかを与えることでヒト蜘蛛アラクネとしての狩りの勘を養う必要はないという判断だな。


あくまで<人間>としての食事をしてもらい、その上で、改めて、


『人間として狩りをする』


ことを学んでもらうさ。野生のヒト蜘蛛アラクネと人間としての狩りの仕方は違ってて当然だ。人間のそれは、いかに道具を上手く使ってリスクを下げつつ確実に獲物を捕らえるかが重要だし。


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