ホビットMk-Ⅰ編 リカバリー

アリアン2CVドゥセボーを乗せた担架をワイバーンⅢ型に固定。コーネリアス号に向けて飛び立つ。


同時に、コーネリアス号側ではアリアン2CVドゥセボーの受け入れ準備を進める。メイトギアのメンテナンスルームに必要になるかもしれない資材を運び込み、彼女用の紙のマニュアルも引っ張り出して、受け入れ態勢を整えた。<修理>はさすがに不可能だとしても、データをサルベージできれば、システム上はアリアン2CVドゥセボーが復活したことになる。ボディの方は、たぶんどうにもならないが。


そこに、ワイバーンⅢ型とドーベルマンMPMらが帰還。担架をメンテナンスルームに搬入。作業台の上にアリアン2CVドゥセボーを安置した。


しかし……


しかし、改めて見ると本当に酷い……ちぎれた胴体部からこぼれる銀色の<筋繊維アクチュエータ>や、ウィッグの大半が抜け落ちた頭部のパーツの合わせ目などでかろうじてロボットであることは察せられるものの、知らずに見たら人間の死体にしか見えないだろうな。


だが、アリアン2CVドゥセボーは人間じゃない。ロボットであり機械だ。だから、ストレージさえ無事ならデータをサルベージできる可能性はある。


通信機は完全にダメになってるようなので、胸部のメンテナンスハッチを開け……ようとしたが固着してしまっていたので、<スプレッダー>という工具を使い、強引にこじ開ける。


バキン!という破壊音と共にハッチが外れ、ドーベルマンMPMがそれを作業台の空いたスペースに置く。そして中を覗き込むと、


「これは。中はそれほど傷んでいませんね。データをサルベージどころか、メインフレームだけなら再起動も可能かもしれません」


エレクシアが映像を確認して言う。


「マジか……!?」


「本当!?」


「それなら…!」


「うん」


俺とシモーヌとビアンカと久利生くりうが声を上げる。ひかり萌花ほのかの世話に忙しいしあかりとルコアはそれこそ関係ないからビアンカと久利生くりうの後ろで見守ってるだけだが。


いずれにせよ、メインフレームが再起動できれば、データではなくAIそのものが新たに確保できるという意味でもある。


なので、


「メンテナンスカプセルでリカバリーしてみよう」


俺はそう決断した。ボディの方はどうにもならないにしても、AIを再起動させるきっかけにはなるかもしれない。エレクシアも、


「そうですね。メンテナンスカプセルを通じてメインフレームだけで完結する設定に書き換えれば、再起動する可能性は高いと思われます」


と告げてくれる。ならば、ダメで元々。試してみるだけだ。


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