ホビットMk-Ⅰ編 ビアンカと黎明と未来と素戔嗚とルコア

新暦〇〇三四年十二月四日




黎明れいあが生まれてもう数日で、ビアンカは未来みらいの相手を再開した。と言っても、黎明れいあに授乳しながらただどっしりと構えてるだけだから、それこそ何ともない。


素戔嗚すさのおの相手については、彼女が見てる前でドーベルマンMPMが務めてくれるから、こちらも問題ない。それどころか、素戔嗚すさのお黎明れいあに興味津々で、尻尾があれば猛然と振ってそうな感じだったな。ひょっとすると、自分の妹のように感じているのかもしれない。


出逢ったばかりの頃の彼の姿はどこへやら。ただの、


<妹が可愛くて仕方ないお兄ちゃん>


である。それについては未来みらいも似たようなもんだけどな。


未来みらいは異母兄。素戔嗚すさのおはそれこそ赤の他人。なのにどちらもちゃんと<お兄ちゃん>なんだよ。見た目には、素戔嗚すさのおが長兄、未来みらいが次兄って感じではあるが。


ルコアはさしずめ長女か。


そうだ。ルコアも黎明れいあにメロメロだ。


「そうそう、優しくね。赤ちゃんのウンチは柔らかいから、女の子の場合、ワレメの中まで入り込んでることがあるし、気を付けてあげて。拭き残すと炎症を起こすこともあるから。ルコアのパパとママもきっと同じようにしてくれたんだよ」


「う、うん……!」


ビアンカに教わりながらおむつ替えも経験したそうだ。ルコアの方から、


「私も手伝いたい」


って言ってくれて。


ちなみに未来みらいの時はきたるが一切合切をしてて、久利生くりうもほとんど手出しできなかった。元々、クロコディアの雌は基本的に、雄に子供を触らせない。信用してないからだ。久利生くりうはもちろん信頼していい相手だと思うが、まあ、クロコディアの感性からすると違いも分からんだろうしな。


それでも久利生くりうは、最初から手慣れた様子で黎明れいあのおむつを替えてみせた。


「医師の研修の際に必要かと思って履修したんだ」


だと。おのれ! まったくどこまでも隙のないイケメンめ。


なお、あかりは、こっちにいる間に、まどかひなた相手にやってきてるからお手の物である。


と、ビクキアテグ村ではこうして誰かが手を貸してくれるが、人間社会が出来上がっていく中でどうしても輪に入れない者も出てくるだろう。ロボットはそういう者を孤立させないためにも必要だ。


ドーベルマンMPMはもう十分な性能がある。人間にできることはほぼ卒なくこなす。


「おお~!」


黎明れいあのおむつ替えだって、誰よりも手早く完璧にやってみせる。見た目にはホントただのマニピュレータなのに、動きが実に繊細だ。と、ドーベルマンMPMでできるならモニカやテレジアはそれこそ余裕である。


ここまでじゃなくても、ホビットにもいずれは人間並みにはできるようになってもらわないといけないんだよな。


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