新編 据え膳食わぬは男の恥

こうしてビアンカの第一子であり久利生くりうにとっては第二子になる<黎明れいあ>を迎え、いよいよあかりの番、という前に、その陰で起こっていたことについて触れておこう。









新暦〇〇三四年一月二十八日




ビクキアテグ村での牙斬がざんの一件が一段落した頃にも、そのことをまったく知らないうららは、あらたに自分を受け入れてもらおうとして、猛アタックを繰り返していた。彼女にしてみれば当然のことだったんだろう。


けれど、あらたとしては、彼女のことは<娘>のようにしか思えないらしく、パートナーとして受け入れる気配はまったくなかった。


人間の場合、こんな風に迫られたら、


『据え膳食わぬは男の恥』


とばかりに折れてしまうこともあるのかもしれないが、いや、ここでも、こうやって雌に気に入ってもらえたら、雄としては受け入れるのが普通なのかもしれないが、ただ、やっぱり、<例外>というものはあるんだ。


みどりを受け入れたすばるだって、最初はすごく戸惑っていて、受け入れない可能性もあっただろう。それがたまたま上手くいったに過ぎないし。


うららも、頑張ってた。




うらら達、パパニアンの朝は早い。夜暗くなるとさっさと寝てしまうから当然かもしれないにせよ、基本的には夜が明けると同時に活動を開始する。これは、同じくパパニアンの血を引くひかりじゅんまどかひなたもだいたい同じだな。決まった時間に起きるわけではないものの、特にまどかひなたは、


『寝てるのはもったいない! 遊ばなきゃ!!』


とばかりに空が明るくなると起きてきて、遊び始める。するとうららもその気配を察して、家から出てくる。そうしてまどかひなたと遊び始めるんだ。


こうして一通り遊ぶと、じゅんに連れられて、密林へと入っていく。朝食をとるためだ。まどかひなたは<人間としての朝食>も食べるものの、その前に<パパニアンとしての朝食>も食べる。これについては、密林の中の食べられるものを知っておいてもらえるというのもあって、助かってる。


うららも、まどかひなたと一緒に遊ぶついでにパパニアンとしての行動を学ぶ。


で、朝食を終えて帰ってくる頃に、あらたほむらさいが起きてきて、朝食にでる。


野生のパパニアンは、早く行かないといい餌が他の動物に取られてしまったりすることもあるから起きるのも早いが、あらたほむらは、生まれてからこの方、餌に困ったことがないからか、ゆっくり起きても問題ないからか、少し寝坊になってきてるんだ。


正直、野性ではそれでは困るものの、あらたほむらも、この集落で一生を終えるだろうし、しかも子供ができる気配もないから、このままでもいい気がしてる。


レオンであるさいも同じだ。ただし、さいの場合は、本来は夜行性だったはずがほむらに合わせてなので、若干、事情は違うか。また、同じくレオンであるしんは、こうかんが巣立ってからはさらにマイペースになってるな。


なお、マンティアンのえいれいは、これまた実にマイペースである。


などと、他はさて置いて、あらたが起きて密林に入っていくと、うららもそれを追って密林にまた入っていくのだった。


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