ビアンカ編 驚天動地の変化

ヒト蜘蛛アラクネは、人間(地球人)にも見える部分の生殖機能を使うことなくヒト蜘蛛アラクネとしてすでに世代を重ねているからさらに退化が進んでるけど、ビアンカについては、アラニーズとしては第一世代だからか、ヒト蜘蛛アラクネよりも確かに各臓器がはっきりしてたのも事実だよね。それが、久利生くりうと毎日のように愛し合ったことで強い刺激を受けて、機能を取り戻してしまった可能性はある」


それが、シモーヌの見解だった。だが、そんなことが本当に起こり得るのか……?


と言っても、実際にビアンカに月経が始まったのは紛れもない事実であって、こればかりはどうにも……


そこで、まあいろいろ下世話な話ではあるもののやっぱりあくまで学術的な問題として、ビアンカ自身と経血を調べることになった。ビアンカとしても、自分の体に起こった驚天動地の変化の正体を知りたいという強い気持ちがあり、積極的に協力してくれたんだ。その際の処置は、もちろん、モニカが担当した。


で、結論から言うと。


「採取された卵子を解析した結果、九九.七二パーセント、地球人としての遺伝子で構成されてた。これは、連是れんぜと、ひそかじんふくよう達との違いよりもむしろ近いくらい。ビアンカの他の部位から採取された遺伝子だと八〇パーセント台なのに、卵子、と言うか、卵巣そのものの細胞が、他の部分とは違った遺伝子を持ってるってことだと思う。実はこれは、人間(地球人)でも確認されたことがある事例なの。他の部位の遺伝子と、卵巣部分の遺伝子が違ってる事例。


もっとも、それについては、元々二卵性双生児として生まれるはずだった子供が、細胞分裂の段階でもう一方を取り込んでしまったという形で起こったことだと言われてるから、ビアンカの場合とは違うかもだけど、考えてみたらアラニーズそのものはまったく形質の違う二種類の動物のキメラなわけで、むしろ十分にあり得ることかもしれない」


と、コーネリアス号の分析器のデータを見たシモーヌが告げる。


「それはつまり……?」


恐る恐るビアンカが問い掛けると、


久利生くりうとの間で妊娠に至る可能性が否定できないってこと」


きっぱりとシモーヌは言った。


「マジか……」


俺は呟いてしまったが、


「やったじゃん! ビアンカ! 久利生くりうの赤ちゃん産めるかもよ!?」


あかりが、飛び上がるようにして笑顔になった。しかも、


「そうだよね…? そうだよね……!?」


ビアンカまで。


そうだな。彼女にしてみれば、諦めていた久利生くりうとの子供を授かれるかもしれないということだ。その事実に、テンションは爆上がりなのだった。


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