ビアンカ編 技術の継承

アリニドラニ村が<職人の村><ものづくりの拠点>となっていくであろうと同時に、ビクキアテグ村でも、『自分達が使うものは自分達で作る』という習慣が根付いていくようにしたいと、久利生くりうは考えている。そのための手本に、自らなろうとしてるというのもあるんだ。


ただ、<斗真とうま>と違って未来みらいは、久利生くりうがしている鍛冶作業にはあまり興味がないらしい。なので、今のところ鍛冶は久利生くりう一人かな。もし、直接その技術を受け継ぐ者がいない場合は、ハートマンやグレイが技術を保全することになる。これは、人間(地球人)の社会でも頻繁に行われていることだ。伝統技術の後継者問題はいつの時代も悩ましいものだったらしいが、専用に調整されたメイトギアなどがその技術を保全し、人間の後継者が現れた時に継承するというな。


おかげで、その気のない人間や十分な技能をもたない人間に無理に継がせて技術そのものが衰退したりということも防げてると聞く。


が、いつまで経っても後継者の人間が現れなくて、延々とロボットだけで保全し続けてるものもあるとか。そうなるといよいよアーカイブ化されて、データだけが残るということにも起こるとも言われてたりする。


自分達で使うものを人間自身の手で作れなくなるというのは、何気にリスクが高いだろう。『ロボットに任せておけばいい』と考えてたらそのロボットそのものを作る技術が失われる可能性もあるわけで。


ちなみに、人間(地球人)の社会では、一から十まで全部ロボットに任せてロボットを作ることは禁止されている。必ず人間が関与することが義務付けられているんだ。


これも、<ロボットの反乱>を予防するためだそうだ。




などといつも通り横道に逸れつつも、久利生くりうが畑で使う<すき>を作る様子を、助手として手伝っているドーベルマンMPMのカメラ越しに見させてもらった。


さすがにここまでにもいくつも作ってきただけあって、手慣れたものだ。手際がいいから見ているだけでも結構楽しい。


こうして、三時間ほどで、一本、作り上げてしまった。


ちなみに、柄の部分は、今のところ担当してくれる者がいないので、コーネリアス号の工作室で、植物のセルロースを原料にした代用プラスティックを使って作ってもらってる。


そんなこんなで日も暮れて、


「少佐、夕食ができました」


ビアンカが呼びに来てくれた。


「ああ、分かった。すぐに向かう」


応えた久利生くりうが作業場を片付け外に出ると、ビアンカがまだ立っていた。村の外に向かって視線を送りつつ。


「レオンの個体が接近中」


監視のドーベルマンMPMからの情報を、久利生くりうの助手を務めていたドーベルマンMPMが伝えたのだった。


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