モニカとハートマン編 皮肉な現実
新暦〇〇三三年九月十六日。
そんな感じでルコアの受け入れ態勢を整えつつ、彼女の様子を窺う。
ちなみに、モニカやハートマンを通じて俺達が見守ってることについては、当然、ルコアにも伝えてある。加えて、『どの範囲まで』というのも厳密に規定して、それも伝えてあるんだ。
あくまで日常的に一般的な家族として一緒にいる範囲内で。
<父親が娘と一緒にいる範囲内>
と言い換えてもいいか。
ルコアは利口で利発な子だから、その意図を理解してくれてる。
『自分がサーペンティアンだから』
と。
そういう利口さは、正直、見ていて辛い。本当ならもっと泣き喚いて自分の境遇を嘆いて我儘放題に振る舞ってくれていいと思う。たとえそれでも、俺達は見捨てない。
なのに彼女は、自分が独りじゃ生きられないことを悟っていて、俺達の庇護を得るために<いい子>を演じてるんだ。
それは分かってる。分かりすぎるくらい伝わってくる。
そのことが悔しくてな。なんでこんな幼い子供がそんな
まだまだ、ひたすら親に甘えてればいいはずの子供が……
さりとて、現実ってのはえてしてそういうものだ。俺の妹の
こんなことが降りかかってくることもあるのが現実だ。だからこそ、俺は、守れるものは全力で守りたい。そして、そのために、俺自身が生きなきゃいけないし、健やかでいなきゃいけない。
でもなあ、
『死んでもいいや』
と考えて<夢色星団>に突入したことで今があるってのも紛れもない事実なんだよな。
いやはや、皮肉な限りだよ。
だったら、ルコアにとっても、
<皮肉な現実>
にしてやりたいじゃないか。
<両親もいないこんな世界に、サーペンティアンなんてものに生れ落ちたからこそ得られた幸せ>
ってものを実現してやりたいじゃないか。
もちろん、意図してそうすることはできなくても、そうなる可能性は常に確保したい。そのために努力はしたい。
でも、今でもすでに、ビアンカと出逢えたことは彼女にとって大きな救いになってるのは間違いないだろう。
実はビアンカも、今の自分に生まれたことを受け入れられてきてるらしい。
例の不定形生物内の世界では、『ほとんど付き合ってるのと変わらない』関係ではありつつ、まだどこか他人行儀なところがあったんだとか。それが今では、二人きりだとメチャクチャ甘々らしいとも。
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