モニカとハートマン編 手本

ちなみに、アラニーズであるビアンカの方は、慎重にあん達との距離を縮めていったことで、現在ではほとんど警戒されていない。ただし、だからといって無遠慮に近付こうとすると警戒されるのは今でも変わらない。


そうかいりんは確かに俺の子で、俺達のところで育ったとはいっても、あん達は生まれた時から野生として生きてきた。だから人間の<距離感>はまったく役に立たない。人間の感覚を押し付けるのは、彼らに対する冒涜でさえある。


ルコアも、ここで生きていく限りは、その辺りを理解してもらわないといけないな。


彼女に対してこちらの都合を一方的に押し付けることはしないものの、丁寧に時間を掛けて対処はするものの、ルコアの<望み>のすべてが受け入れられるわけじゃないことも理解していってもらわないといけない。


これもまた、<生きる>ということだろう。自分ばかりが優遇されるわけじゃないのもまた事実。


<自分の好都合>は<誰かの不都合>だったりするからな。それをいかに折り合いを付けるかというのも大事なんだ。


人間(地球人)はかつて、自分達の都合ばかりを優先しようとして<自然>も<他人>も蔑ろにしてきたことで大変なトラブルを引き起こしてきた。その所為で多くの命が失われ、無数の<種>が永久に失われた。


他の惑星への移住についても、初期には人間(地球人)にばかり都合のいい環境に惑星を改造して、やっぱり、貴重な<種>が永久に失われたりもした。


今ではそれを反省して環境負荷についても慎重に綿密に考えるようにもなったものの、失われたものは二度と戻らない。その<業>についてはこれからも背負っていかなきゃいけないだろう。


ルコアにも、それは分かっていってもらわないといけないんだ。


『他者を尊重することを忘れないでいてこそ、自分も尊重してもらえる』


これは、紛れもない事実だ。他人を尊重しない奴は、他人からも尊重してもらえない。


子供にこの事実を理解してもらうことそこが、


『甘やかさないこと』


だと思うよ。


ただし、だからこそ、大人の側の事情ばかりを一方的に押し付けることも許されないんだ。


子供はまだ未熟だということもあって、『他人を尊重しない奴は、他人からも尊重してもらえない』というのが十分に理解できてない。それを理解するための経験を積んでいる真っ最中だから大目に見る必要もあるものの、大人はな。子供よりはわきまえてなきゃおかしいだろう?


子供に対して手本も示さなきゃいけないしな。


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