麗編 想いが成就する目

そんなわけで、アリスとドライツェンをはじめとした新しく作られるロボット達については、当面、<個人所有>という形にはしないでおこうと思う。


あくまで<朋群ほうむ人全体が所有者>ということにしておいて、社会が拡大してその辺りのあれこれを改めて考える必要が出てきた時に対処してもらうさ。


<現場>を見てるわけじゃない俺が何もかもガチガチに決めたら、まあ、まず間違いなく実情にそぐわない部分が出てくるだろう。


そんな形で朋群ほうむ人達の足を引っ張りたくもない。




等々、相も変わらずあれこれと考えてる俺のことなどまったく意にも介さず、うららあらたにべったりだった。


なのに、あらたは彼女をそういう目で見ようとしない。そういう相手としては受け入れていない。


そして、うららも、ほむらに追い払われてもすばるに連れ戻されても凝りもせず猛アピールを行うパパニアンの若い雄には見向きもしない。


いやはや、上手くいかないものですな。


そんな中、まどかひなただけが、これまでと変わらずにうららと接してくれていた。


うらら~」


「あそぼ~♡」


二人が誘うと、うららも寄ってきてくれる。そして追っかけっことかを始めるんだ。その流れで、じゅんに連れられて密林へと入っていく。


すると、あらたがホッとしたような表情を見せるのが俺にも分かった。


うららのことを嫌ってはいないものの、彼女のアピールが負担になっている様子が窺えた。


その姿が、どことなく、


<休日に子供に付き合わされて振り回されて疲れ切った父親>


にも見えて、なんだか身につまされる。


そう。


<若い娘に一方的に想いを寄せられて困惑する中年男>


と言うよりも、<父親の姿>ぽいんだ。


それがまた、あらたが、うららを必ずしも<娘>と思っているわけじゃないものの、どちらかと言えばそっちよりの認識ではあるという印象になっているのかもしれない。


単なる<仲間>というよりは、<娘>に近い存在になってるってことか。


そうだ。以前は本当にただ<仲間>と見ていたみたいだが、彼女が<成熟した雌>に近付くにつれ、逆にあらた自身にとっては<娘>に近い存在だと認識を改めた感じかもな。


そうなると、いよいよ、うららの想いが成就する目はなくなってきてるということかもしれない。


うららの想いがどうなるか、結末に至るのはもう少し先になりそうだが、ほぼほぼ結果が見えているそれを見守るというのも、なかなか辛いものですな。


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