麗編 ダークマターシャッター現象
太陽系外の移住可能な惑星を探査するためにメイトギアを載せて放たれた千を超える亜光速ロケットの中に、日本及び日本をルーツに持つ巨大複合企業体<
コーネリアス号にも、
<あさぎシリーズ>を搭載した<あさがお型亜光速ロケット>はいくつもの有望な惑星を発見し、データを送信してきた。そのうちの一つが、後に<ハイシャイン>と名付けられることになる、恒星イ三七七太陽系の惑星だった。
それを発見したのは、記録では<あさぎ2788KMM>というメイトギアだとされている。そしてここから先の情報は断片的なものが多く、研究家達が集めた膨大なデータを付き合わせたことで浮かび上がってきたものであることを承知してもらいたい。
たとえ地球上であっても、上空からの観測では分からなかったものが現地に行くと判明したりすることがあるように、宇宙でも、地球から観測しているだけでは発見できなかった新たな恒星系や惑星が、実際に探査用の亜光速ロケットを送り込むことで次々と発見され、地球人が地球から見上げていた時に想像していたよりも遥かに宇宙は豊かであることが分かった。地球がある太陽系から僅か数十光年しか離れていないところにも、生物が住む惑星がいくつも発見されたんだ。
重力によって光が曲げられて実像とは違って見える<重力レンズ効果>は昔から有名だったが、亜光速ロケットにより現地に赴くとそれまで観測できなかったものが発見されることで判明した、<ダークマターシャッター現象>というのが原因らしい。
俺も理屈についてはちんぷんかんぷんだが、宇宙の大部分を構成するとされている<ダークマター>が、ある条件下では、光も電波も放射線もシャットアウトしてその陰にあるものを見えなくしてしまうというのがそれなんだと。
後の<惑星ハイシャイン>もそのせいで発見されなかった惑星のうちの一つで、表面の八割が海で覆われ、まさに海洋生物が陸上に進出しようとしている最中だった。
だが、確実に歴史に残るであろう功績を挙げた<あさぎ2788KMM>だったものの、データを送信した後に地球に帰還する途中、ロケットが故障。宇宙を漂うことになってしまったそうだ。
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