麗編 惑星ハイシャインの悲劇

自分に都合の悪いものは排除しようと考えつつ、自分が排除されそうになったら被害者ぶる。


その辺りも人間(地球人)の悪癖なんだろうな。


自分が排除されたくないのなら、他人も排除しようとしちゃいけないのにな。


しかし、宇宙にまで生活圏を広げた人間(地球人)は、考えを同じくする者同士でコミュニティを作ることを容易にした。


それでも、スペースコロニーの建造、火星や、木星の衛星イオやエウロパやガニメデ、および土星の衛星タイタンの開発が進んだ頃にはまだ十分じゃなくて、なんだかんだと衝突もあったらしい。


が、さらに太陽系外にまで亜高速ロケットを飛ばして惑星探査を行い、しかも<恒星間航行技術ハイパードライブ>を発明するに至って一気に惑星の開発と移住が本格化。太陽系内での軋轢に嫌気がさした者達を中心に自分達が理想とする社会の構築を目指して競うように開発を進めたという。


ただ、そのあまりに性急な開発は、当時はまだ十分に進歩していなかった技術とも相まって無数の事故を誘発。加えて、恒星間航行技術ハイパードライブを可能にした縮退炉だったものの、最初期のものには致命的な欠陥があり、公式には確認されていないが暴走事故が何件か発生。重力崩壊を起こしてマイクロブラックホールまで生み出したという<噂>が。


この頃に、以前にも話したと思う、数億から十数億もの犠牲者を出したとされる人間(地球人)の<黒歴史>が生まれたわけだ。


多くの研究者が当時に起こったことを解明し教訓にしようと努力しているが、膨大なデータが<事故>により失われ、あるいは意図的に抹消され、残された断片的な情報から推測するという程度にとどまっているんだと。


その中には、


『入植が始まったばかりの惑星が、百万人を超える入植者もろとも消滅した』


などという、事実とも都市伝説ともつかないものもあるとも。


それに対しては、エレクシアは、


「その話の基となったであろう<事故>については、事実であることは確認されています。惑星<ハイシャイン>が、移民船<しおかぜ号>の縮退炉暴走に伴うマイクロブラックホール化の影響を受け、公転軌道より外れて<自由惑星>となり、全球凍結。逃げ遅れた百万人の入植者全員の生存が絶望視されているという事例です。周囲の植民惑星に届いた救難信号を基に救助活動が行われたものの、最初に脱出できた一部を除き、生存者は確認できなかったそうです」


と説明してくれた。


「まったく、おっかない話だな……」


「本当に……」


ざっと三千年前に起こったとされる<惑星ハイシャインの悲劇>については、長らく情報管制が敷かれていたらしく、シモーヌ達にとってはそれこそ<都市伝説の類>という認識だったそうだ。


いやはや、ここではそういうことがないようにしたいものだな。


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