麗編 柔軟に対応
『なんでその程度で』
と思うかもしれないが、考えてみてほしい。世の中には、別に家族が理不尽な死を迎えたわけでもないのに普段から苛々して他人に当たり散らすタイプの人間も少なくないだろう? 特にネットなんかを見ていれば、本当に些細な理由で他人を罵り貶し攻撃するようなのは無数にいるはずだ。
もちろん、本人にとっては、
<そうなるだけの理由>
があるんだろうが、まったくの赤の他人からすれば、
<実にどうでもいい、くだらない理由>
にも見えるだろう? そういうことだ。他人から見て些細な理由かどうかは関係ないんだよ。
しかも、この世界にあるあらゆるものを一方的に蹂躙することだってできてしまう<力>を持ってるとなれば、ちょっとした気の持ちようで人が変わったように横暴になることだって何も不思議じゃない。
『力を持つ』
というのはそういう一面もあると思う。
でも、エレクシアが、シモーヌが、
俺の中の<悪>が育つのを防いでくれてる。
それがすごく分かる。
メイトギアには、そういう人間の心理についての膨大なデータが蓄積されてる。
そのデータを丸ごとコピーすることはできないものの、アリスやドライツェンも、エレクシアやセシリアが持つノウハウを引き継いで、人間を支えていってくれると思う。
ここを<楽園>のようにはさすがにできなくても、なるべく酷いことにはならないようにしていってほしいと切に願う。
そして、ロボットにばかり頼らなくても、人間自身で、<理不尽が生み出す悪>を抑える努力をしていってほしい。
今の時点では、彼らに明確な<悪>は存在しないんだ。せっかくのその状態を台無しにしてほしくないじゃないか。
そのためには俺もいろいろと考えるさ。
元々は、例の不定形生物が基になって生じるであろう、
<人間をとにかく憎んでいる怪物>
を引き付けておくための<ダミー>として開発を始めた新しい集落だったが、こうして時間と共にその目的が変遷するというのも、まあ、人間の社会ではよくあることだと思う。
それに、<ダミーの集落>については、ここまでで得たノウハウを基に、ドーベルマンMPM達の手で着々と生まれていってる。
だから心配はしていない。
となれば、状況に合わせて、アリゼドラぜ村、アリニドラニ村、アカトキツユ村の目的も変わってって当然だろう。
いろいろな事情を抱えた者達に合わせて柔軟に対応できることが大事だよ。
人間(地球人)の社会だと、その手の<事情>を酌もうとするとやけに反発するのもいたが、ここにはまだそういうのはいないしな。
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