メイガス編 循環の一つ

なんてことをしてる間にも、いろいろなことは起こる。


ほまれの群れでも、ボスとしてのほまれがそろそろ交代を意識しているようだ。あいつももう三十歳過ぎ。老化抑制処置を受けていない人間で言えば六十を大きく超えている。俺の血を受け継いでいることで他のパパニアンよりは老化の速度が遅いのは確認できているが、それでも、人間(地球人)の形質が強く出たひかりに比べれば確実に老化の速度が速い。


ほまれも自分の衰えを自覚してるんだろう。高い知能と経験でそれを補ってもそう遠くないうちに限界は来る。そして、頭がいいほまれは、自分がいよいよダメになる前に次の世代にボスを譲るつもりなんだ。メイフェアが、


「俺はどうしたらいい?」


と問い掛けてきたほまれに、


「ご自身から身を引いて、実力があり群れからの信頼も厚い方にボスの座を譲るという方法もあります」


そうアドバイスしたそうだ。あいつはそれを実行しようとしてるんだろうな。


そして、次のボスの最有力候補は、とどろきらしい。


実は、少し前までとどろきの上には何人かのボス候補がいたんだが、ほまれの在任期間が長かったことで全盛期を過ぎてしまい、結果として、とどろきの序列が現在、雄ではほまれに次いで二位となっているんだ。


群れに加わったばかりの頃はただの<乱暴者>だったとどろきだが、たもつすばるの件に見事に対処したりと、確実に<ボスの器量>を身に付けている。


メイフェアによれば、ほまれはこうも言ってたそうだ。


「ボスじゃなくなれば、俺はどうすればいい? 群れを出るべきか?」


それに対してメイフェアは、


「私と一緒に、お父様のところに帰りましょう。もちろん、あお様も一緒に」


と言ってくれたそうだ。


いよいよ、『子世代を見送る』というのが現実味を帯びてきたな。


とは言え、老化具合を精査するとまだ十年以上は確実に時間はありそうだが、ただ、純粋なパパニアンであるあおは、ほまれよりも衰えが早い。<命の期限>も、確実に先に終わりを迎えるだろう。一緒に俺のところに戻ってくれば、ほまれあおを見送ることになるだろうな。


そしてこれは、そうかいりん達にも言える。そう遠くないうちに、パートナーを見送り、世代交代を迎えることになるんだ。


が、レオンであるそう達は、あの草原からこっちに戻る気はないかもしれない。しんさいと違って、あっちを自分達の生きる場所に選んだからな。


となると、ビクキアテグ村で余生を送ってもらうか、モニカ(アリス初号機)やハートマン(ドライツェン初号機)の世話になりながらコーネリアス号の傍で余生を過ごすかって感じか。


新しい仲間が増えれば、去っていく仲間もいる。


これは当然のことだ。


ルコアとメイガスのことも、そういう<循環>の一つだな。


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