メイガス編 会合

新暦〇〇三三年十月三日。




「どうかな? 調子は」


「うん、すっかり良くなったと思う。普通の人間の体だとこうはいかないかもしれないけど、さすが、自然の中で生きていけるだけの力を持った体だね」


翌朝、治療カプセルを出たメイガスと軽くそんな感じで声を交わした。


それから、いつものように庭でテーブルを囲んで……


というのはやめておいた。今のメイガスはクロコディアだからな。あまり長い時間、水から離れて体が乾くと、免疫が低下するんだ。そんなわけで、ちからはるかのために作った<池>の脇に椅子を置いて、メイガスは池に体を浸して、しち号機と拾弐じゅうに号機にタブレットを持ってもらって、ビアンカと久利生くりうも参加して、話をすることになった。


ちなみにメイガスには、池の底にちからはるかというクロコディアの二人が眠っていることは告げてある。しかし彼女ももう心得たもので、


「彼らは仲間の遺体を川底に埋めることがあるからね。気にならないよ」


と言ってくれてる。


それでもって、その上で、


「まずは、私からだね」


椅子に座ったシモーヌが、口を開く。そうして、河の中で意識を取り戻してクロコディアに襲われて腕を食いちぎられそうになりながらもメイフェアとエレクシアに助けられて俺のところに来て、ひかり達に囲まれて、あかりを育てて、そうしてゆっくりと<自分>を確立していったことを、丁寧に語った。


その上で、あの不定形生物は落雷等の強い刺激を受けると決まった形を取ることがあって、しかもかなりの確率で<キメラ化>を起こすことも、そして、シモーヌ自身は直接面識はないものの記録で見た自身と同じ姿を持った<グンタイ竜グンタイの女王>の件も絡めつつ、専門は植物とはいえ生物全般にもそれなりに造詣の深い<学者>としての冷静な語り口で説明してくれた。


するとメイガスも、


「なるほど。概ね理解したよ。合点がいった」


頷いてくれた。


さらに、


「次は、私か」


ビアンカが続く。


「私の場合は、<これ>だからね。正直、すごく悩んだよ。死んだ方がマシかもと内心では考えた。でも、今はもう、そんなことは考えてない。すごく幸せだし」


と前置きした上で、アラニーズとしてのこれまでの自分の足跡を語って見せた。


と言うか実際には、


「少佐がこんな私を受け入れてくれて~♡」


などと、いかに今、久利生くりうとラブラブかを、惚気て見せただけか。


するとメイガスも、


「はいはい、あんたが今どれだけ幸せかは、伝わってきたよ。想いが成就したんだね。傍から見ててもあんたと久利生くりうのことはじれったかったから、上手くいったんなら本当によかった。おめでとう」


惚気にてられたらしく苦笑いを浮かべてるのが分かる表情をしつつ、祝福してくれたのだった。


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