メイガス編 影響

現状、俺達の間で意見の対立が生じていないように見えるのは、何より、俺の家族以外は、


<惑星探査チームに選ばれるような人材>


だからというのが大きいと思う。


なにしろ、ものすごく理性的で論理的な物の考え方をする者達だからこそ選抜されたわけで、どう考えたって受け入れられないような無茶も言ってこないし必要とあれば自分が折れてでも合理的な判断をしてくれるからな。


まあ、俺としても、無理難題を押し付ける気はないからってもある。そして何より、シモーヌをはじめ、彼女らのこと自体を受け止めたいと思ってるし。


意見が食い違うならとことん話し合って妥協点を見い出していきたい。


<話し合い>が通じない相手や、対話ができない相手について、


『誠意を持って話し合えばきっと分かり合える!』


なんてことを言うつもりもないものの、話し合いができる相手に対して、


『何を話しても無駄だ!』


的に最初から諦めるつもりもない。


それだけのことなんだ。


せっかく理性的に対処してくれてる相手にわざわざ喧嘩腰で突っかかる必要もないしな。


だからメイガスのことも、そういう意味での心配はしてない。


ただ、シモーヌは言った。


「メイガスって、こんな感じだったかな? っていうのは、正直言ってある」


それに対して、ビアンカも、


「はい、それは私も思いました。元々の彼女は、もう少し穏やかな感じの人でしたよね」


と。


けれど、久利生くりうは、


「でも、それを言うなら、僕としてはシモーヌやビアンカに対しても、『以前とは少し変わったな』という印象はあるんだよ。まったく別人ってほどの変化ではないものの、以前にはなかった種類の<強さ>も感じるんだ。


もちろん、以前が『人間として弱かった』という意味じゃない。何と言うか、タフさが増したと言うか、そんな感じの変化かな」


そう口にした。


するとシモーヌは言った。


「確かに、それはあるかもしれない。環境による影響ももちろんだけど、何より、体が変わったことの影響が大きいんだと思う。


人間の人格と性格というのは、実は肉体側のフィードバックによっても作り上げられてるっていうのが分かってる。二人も、全身義体になった人の性格が変わるという話は知ってるよね?」


「ああ。もちろん」


「はい、軍にいた仲間にも全身義体になった人がいましたから……」


久利生くりうとビアンカが応える。けれどその表情は、必ずしも明るいものじゃなかった。


それが何故かというのを、俺も察してしまった。


なにしろ、全身義体化が当人の人間性に影響を与えるという話は、俺もエレクシアから聞かされていたからな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る