ルコア編 差異
<サーペンティアンの少女>を保護したビアンカは、グレイを伴ってまずコーネリアス号へと向かった。
取り敢えずコーネリアス号の<隔離室>で、少女の状態を確認するためだ。
<隔離室>というのは、文字通り、対象を隔離しておくためのスペースなんだが、同時に、採取した物質や生物が危険な物でないかどうかを確認するための設備でもある。要するに、俺の
「……」
しかし少女は、コーネリアス号の中に入っても、まだ怯えた様子だった。見慣れない場所に不安になっている感じか。
まあ、あの不定形生物の中で生まれて<文明>と呼べるものをほとんど知らずに育ったのなら、分からないでもないだろう。
ただ、疑問もある。
「あの中では、こちらとはまったく時間の流れが違ってたんだと思う。それなりの時間が経過してたようには思うけど、私がここに来た時には、遭難から二千年以上経ってたって言われてさすがに驚いたからね。そこまでの時間だとは思わなかった。
それに、私とビアンカとでも、実際には時間の感覚にズレがあるみたい。だから、あの中でのことは、私達が思っている以上に複雑なのかもしれない。
たとえば、何パターンものシミュレーションが同時に行われていて、私とビアンカは別々のパターンから来たという可能性も考えられるかな」
シモーヌが俺の代わりに具体的に言葉にしてくれた。
確かに、あの不定形生物に関しては、正直なところ、ほとんど何も分かってないに等しいくらいに全容については掴めていないんだ。どんな秘密があったとしても驚かないくらいにはな。
もっとも、今の俺達がいくら詮索したところでどうせ推測以上のことはできないのも事実。実際に俺達の前にあるものをそのまま受け止めるだけだ。シモーヌのこともビアンカのことも
シモーヌはさらに続ける。
「私が知る限りじゃ、ディルアとメイガスの間に子供はいなかった……もし、私が今の私になってから生まれたんだとしても、明らかに計算が合わない。
私は、あの中と現実とでは千倍くらいの時間の流れの差があると感じてたのに、それだと、この子がこんなに成長してるはずがないから……」
彼女の言葉を受けて、俺も思う。
「なるほど……<別々のシミュレーション>が同時進行で行われていて、それぞれ微妙に差異が生じてるんだとしたら、矛盾があっても何もおかしくないな」
「ええ、私もビアンカも
「まったく、どこまでも得体の知れないやつだな……」
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