按編 一個の命
怪我をしているのか足を引きずっている
当然、
しかも、群れの仲間達はレオンの襲撃に気付いて全速力で逃げる。狙われた仲間を助けようとはしない。
厳しいが、これもまた、この世界の摂理だな。
だから、もし、逆に
孫達は助けて、曾孫達以降は助けないという決断をした俺自身の葛藤を、それによって強引に自分自身に納得させていく。
……いや、納得なんて、たぶん、俺自身が死ぬまでできないだろう。そんなところで線を引こうとする自分自身に対する憤りが消えることはないと思う。
でも、それでも、すべてを助けることができない以上、どこかで線は引かなくちゃいけない。
たとえ俺がこの惑星を自分の思い通りに弄ろうとしても、零れ落ちてしまう命は必ずある。
エレクシア達がいなければ、ほんの数日生き延びることさえままならないただの人間である俺にできることなんて本当にたかが知れている。
たぶん、必要なのは、
『たかが知れているという事実を受け入れること』
なんだと実感する。
努力はしたい。諦めたくもない。しかし、俺の手は無限に届くわけじゃない。
こうして
なんてことを俺が思っている間にも、母親である
なのに
その目は光を失い、体からは力が失せていく。
一つの命が、喪われていく。
そして、それによって
おそらく子を残すことができない
『こんな奴を生かすために他の命を犠牲にするのは無駄だ! こいつが死ぬべきだ!』
などと言う人間(地球人)もいるだろう。なるほどそれも一つの考え方かもしれない。孫達は助け、曾孫達以降は助けないと考える俺にそれを批判する資格はないとは思う。
けどな、実際にこうしてこの世界の<命の営み>を見ている限りは、<価値>があるとかないとかいう考え方自体が傲慢なんだと実感するよ。生きるか死ぬかは、本当に紙一重のことなんだ。
『価値のあるものが生き、価値のないものは死ぬべきだ』
なんて考え方自体に意味なんてないんだ。
ここでは全ての命が、生きるために戦っている。
ただただその現実だけが、ここにはあるんだ。
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