晴編 準備
シモーヌに諭されて、俺は少し気が楽になっていた。エレクシアに支えられてるのももちろんそうだが、今ではかなりの割合でシモーヌに支えられているのを実感する。
その一方で、彼女自身が言うように、シモーヌも俺に救われたと思ってくれてるようだ。
これは俺が一方的に自分の気持ちに従ってやったことなので別に感謝してもらいたいとも思ってないんだが、彼女は感謝してくれていると言う。
「これだけのことをしてくれておいて『感謝しなくていい』というのは、逆に失礼だと思いますよ」
とも言われてしまった。
「そういうもんかな……」
俺自身は、他人から感謝されるというのがどうにもピンと来なくて、むしろ変に感謝されるとその<裏>を読もうとしてしまうクセがあった。だから感謝されない方が安心できるんだ。
でも、シモーヌからそう言われるのは、悪い気はしない。
たぶんそれは、彼女が何か下心があってそう言ってるんじゃないのが伝わるからだろうな。
それが分かる相手となら、こうして長く一緒に暮らすこともできるんだ。
彼女が仲間に加わってからすでに三十年。俺の老化抑制処置の効果が切れるまであと四十年ほど。彼女もそれくらいらしい。
あの不定形生物がそこまで完璧に再現してくれてればの話ではあるものの、どうやらその心配はないようだ。彼女の肉体年齢の進行具合も丁度そのくらいだし。
そんなこんなで、彼女ともすっかり<夫婦>として馴染んでしまったが、まあその分、<夫婦の営み>もそれなりにある。
ここまでこれといって避妊はしてこなかったものの妊娠はまだだ。
子供ができればそれで良し。できなくてもそれで良し。成り行きに任せるさ。
一方、
あれ自体が若いマンティアンにとっては<経験>の一つにしかすぎず、勝とうが負けようが大した問題じゃないらしい。
やられた時のダメージも特にないようだし。
なお、
完全な巣立ちに向けての準備に入った感じか。
俺の子として育った
とは言え、完全に殺すつもりってわけでもないみたいだけどな。
その辺り、少なからず親としての気持ちはあるらしい。
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