鋭編 食事

ドーベルマンDK-aや、アリス、ドライツェンのような、<異形のロボット>は、動物達も基本的には警戒してくれるから、警備には実にうってつけだった。


だからドーベルマンDK-aについては、森の中で哨戒を行ってもらってる。家のことはエレクシアとセシリアとイレーネがいるし、俺達も基本的には自分のことは自分でしてる。


加えて、まどかも、お手伝いをするようになった。本人が「やりたい!」と言い出した時に、二度手間になったり結局は付きっきりになるから他のことができないからとかでやらせないんじゃなく、その手間を掛けてでもやりたいと言い出した時にやってもらうんだ。


これは、ひかりあかりの時もそうだった。本人がやりたいと言い出した時にやってもらうようにしないと、後から、


『手伝いをしなさい!』


と頭ごなしに言っても、


『やらなくていいって言ったじゃん!!』


ってことになってやってくれなくなる場合が多いと、メイトギアが蓄積したデータが物語ってるそうだ。


まあ、確かにな。と俺も思う。


結局、そういうのが上手くいかないのは、親の側が甘えてるからなんだよな。それを子供に見透かされてるんだ。ひかりあかりは俺のことをものすごくよく見ていた。いくら俺が上辺だけを取り繕うとしても完全に見透かされてたのが分かったから、俺は上辺を取り繕うことをしなかった。


『子供にはどうせ分からない』


ってのは、まさに親の<甘え>だよ。子供は本当に親のことをよく見てる。未熟だからそれを上手く伝えるだけの語彙を持ってないだけだ。で、それが身に付いてくると、それまで言えなかったことを言い始める。


『生意気なことを言うようになった』


んじゃない。言おうと思ってたこと言いたかったことを表現できるだけの語彙が身に着いてきただけで、実際にはもうそれ以前から見透かされてたんだよ。




などとやっぱり脱線しつつ、ドーベルマンDK-aの話に戻すと、さすがに長く見てると慣れてくるようで、駿しゅん達もレッド達も、今ではほとんど恐れない。だからといって馴れ馴れしくするわけじゃないものの、見掛けただけで逃げるというのはもうない。


まあ、駿しゅんの場合は、ろく号機に育てられたようなもので親だと思ってる節があるから、また事情は違うのかもしれないが。


えいも、自分からは近付かないものの、慌てて逃げたりもしない。


狩りに出た先で、今日はきゅう号機と鉢合わせたりもしたが、ビクッと僅かに体を竦ませただけで後はそのまま進んで行く様子がカメラに捉えられたりしていた。


それから、トカゲや鳥を捕えては食事にしてたな。


これがえいの日常である。


起きて、狩りに行って、獲物を捕らえて食って、帰って、寝る。


恐ろしく淡々としたルーチンワーク。


マンティアンには本来ないはずの立派な<つの>を掲げて、えいは密林をただ黙って見詰めていたのだった。


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