保編 育成を促進

新暦〇〇三十一年三月二十八日。




人間なら自分の子にボスの座を譲りたいと思ってしまうのかもしれないが、パパニアンの社会ではそういうのはあまりないようだ。とにかく実力主義、勝った者がボスの座を射止めるというのが大前提だな。


その上で、たもつはボスの座には興味がないらしい。


少なくとも今のところは。


そんなたもつを無理矢理ボスの座の獲得競争に加えようとしない点でも、ほまれあおはちゃんとしてる気がする。


それでも、一応、ボスの子がボスの座を受け継ぐ例がないわけじゃないらしいが、群れの雌の多くが自分の姉妹という状況になるから、受け継がない方が無難なのか。


近親婚を避けようとすれば、自分の姉妹じゃない雌からしか相手を選べなくなるしな。雌が他の群れから加わることは、雄のそれよりも基本的には少ないようだ。しかも、他の群れから加わった雌はボスに気に入られでもしない限り、基本的に地位が低くなる傾向があると見られてる。たもつの祖母に当たるひそかも、はっきり言って群れの中での<ガス抜き要員>として加えられたという経緯があるし。


ちなみにほまれはそれはしてないようだ。群れの中のトラブルは自分が出向いて解決するからだろうな。


そういうこともありつつ、とどろきがそうであるように、ボス以外の雄はパートナーを見付けられないわけじゃなくて、ボスの子と番うことは当然あるし、さらには先代や先々代のボスの子である雌と、ということもある。


ちなみにとどろきのパートナーは、先代のボスの娘|(たぶん)だ。正直、ほまれとその嫁と子供以外のパパニアンについては、とどろきすばるのように目立つのじゃない限りあんまり丁寧に確認してないんだよ。


そこまでやってられないから。




で、たもつは、相変わらず淡々と自分の役目をこなしてる。


若い雄を連れて哨戒に出るのも怠らない。


たまに他の群れのグループと衝突になったりもするし、その際には勇敢に戦ったりもする。


強さとしては、まあ、標準的な感じかな。特別強いわけでもなく、かといってまったく役立たずなほど弱くもない。


ただ、親譲りの巧者ではあるようだ。真っ向からぶつかって力押しで勝つというよりは、たまに<罠>を使って相手を翻弄するようなこともする。


相手と対峙している時に後ろ手で木の枝に細工をして、飛び掛かってきたら自分は退いて、跳ねた木の枝に相手が怯んだところに一撃といった感じで。


その上で、<技>も使う。


が、<圧倒的な強さ>という印象はまったくない。真っ向から戦えば、とどろきは元よりすばるにも楽には勝てないだろう。<罠>などが上手くハマれば勝てる可能性はあるというだけで。


それでいて、間違いなく頭はいいんだよ。


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