保編 ちょっとした変化

などということがあったんだが、これまでは触れてこなかった。


正直、この程度のことはここでは日常的に起こってるからな。


もしすばるがこれで亡くなっていたらその時点で触れたかもしれないが、助かったし。


この対応について『薄情だ!』と言うなら言ってもらっていいが、俺の家族でもない赤の他人のそういう感覚を尊重しなきゃならない理由は俺にはないわけで。


まあ、俺の方からは別に面と向かってケチ付けることはないよ。


ただ、自分の家族に振り向いてもらえない、大切にしてもらえない鬱憤を俺にぶつけられてもなあ。そういうのは自分の家族相手にやってくれ。としか思わないかな。


でも、俺がもしそんなことを家族に対してやってたら、いや、他人に対してもだが、そういう人間だったら今の幸せはなかったとすごく思う。










新暦〇〇三十一年三月二十四日。




とかなんとか、いつも通りに脱線しつつ、ドローンのカメラに捉えられる、無事に回復したすばるの姿を見てホッとする。


で、あの後どうなったかと言えば、メイフェアが救命処置をしていたところに<余所者の雄>が、すばるにとどめを刺そうとしたのか飛び掛かってきて、しかしその隙をとどろきに突かれ、後頭部に思いっ切り体重の乗った飛び蹴りを食らって昏倒。そのままとどろきにボコボコにされてたのをメイフェアに助けに入ってもらって、逃がしてやった。


こう書くといかにもすばるが<噛ませ犬>だったように思えるかもしれないものの、いやいや、たまたまだから。たまたまとどろきの一撃がいい感じに入ったから結果的にそうなっただけで、真っ向からやり合ってたらとどろきだって苦戦してただろうと思う。


しかし野生ではその『たまたま』が生死を分けたりするから、これを軽んじるわけにもいかないけどな。


あと、この時の<余所者の雄>については『殺しておくべきだ!』とかいう意見もあるかもしれないが、これによってまた他の群れが挑まれてそれでボスが交代することになったとしても、それで負けるようなボスだったらどのみち長くは続かなかっただろうし、そういうものなんじゃないかな。


だいたい、あの余所者の雄がここまで生きていられたってことは、殺すことが前提じゃないんだよ。こうやって経験を積んでさらに強くなっていずれは、っていうこと自体が摂理なんだろうし。


その一方で、こういう雄に対してはほまれ達みたいに一人ずつ順に相手するんじゃなく、集団で袋叩きにっていう対応の仕方もアリなのかもしれない。


これもまあ、あくまでただの<方法論>であってどっちが正しいっていうことじゃないと思う。


結果として無事に撃退できたし。


しかも、今回のことで、ほまれの群れにちょっとした変化が起こった。


それまですばるのことには見向きもしなかったみどりが、彼の毛繕いをするようになったんだ。


「……?」


もっとも、それまでは自分にべったりだったみどりが急にすばるの毛繕いをしてたもんだから、哨戒に出てて例の騒動を知らないたもつが、不思議そうにその様子を見てたりもしたのだった。


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