第三世代

第三部 ~世界~

さて、きたる久利生くりうの間にも未来みらいが生まれ、いよいよ第三世代が揃った感じかな。


ちなみに未来みらいは、免疫についてもクロコディアのそれを受け継いだらしく、健康そのものだ。もちろん成体のクロコディアに比べればまだまだだとしても、隔離して保護しなきゃいけないほどでもないようだ。


無論、同時に、注意も怠らない。少しでも異変があれば対処するように体制も整えてある。その上で見守って生きたい。




そんなわけで、これからは俺の孫世代のことを中心に触れていこうと思う。


とは言え、俺自身、老化抑制処置を受けて健康寿命が二百年を超えた人間として肉体的にはまだまだ現役だから、これまでと変わらず何だかんだと首を突っ込むことになるだろう。


完全な隠居生活はまだまだ先ということだ。


ここまで特に触れてこなかった部分にも改めて触れていくことになるので、時系列は結構前後することになるかもしれない。


で、さっそく、時間をさかのぼって、まずはしばらく触れてこなかったボクサー竜ボクサーである駿しゅんのことに触れようか。


これは、久利生くりうが現れる少し前の話だ。










新暦〇〇三十二年四月二十二日。




ボクサー竜ボクサーの寿命は、大体二十年から三十年と見られてる。


なので駿しゅんもレッドもブルーもイエローもまあまあいい歳だ。今のところは元気なので大丈夫だろう。特に駿しゅんは、最近、ごうも圧倒するくらいだし。


年齢を重ねたことでごうの方はピークを過ぎた感じなんだが、駿しゅんは今がまさにピークなのかもしれない。その所為もあって、ボスの座を狙ってくる雄を駿しゅんが退けてる状態だ。


群れ自体、二十頭を超え、基本的には十頭前後の群れを作るボクサー竜ボクサーの中では最大クラスになっていると思われる。しかも俺達の家の周囲を縄張りとしている上に俺達とは敵対関係にないので、非常に心強い<守り>になってくれている。


なお、レッド、ブルー、イエローもそれぞれ子を生し、こちらはそれこそ俺達の家の庭を我が物顔で歩き回ってる。


しかも、子供世代はますます距離を縮めてきて、まどかひなたさえ仲間と見做してるようで、ますます犬のようになってきてる気がするな。


その一方で、駿しゅん達は、敵対はしないものの決して自分達からは近付いてこない。


こうして<狼>と<犬>に分かれていったのかもしれないと感じるよ。


実際、レッド、ブルー、イエロー達は完全に駿しゅんの群れからは独立し、独自の道を歩んでるわけで。


俺達から餌をもらうことで、ほとんど狩りもしなくなった。もちろん餌をもらえなくなれば狩りもするんだろうが、積極的にはしない。


生態そのものが変化しつつあるようだ。


そんな中、レッド達の子供の一頭が密林の中に入っていったんだ。


すると、間の悪いことに駿しゅんと鉢合わせてしまって……


結果は、この世界が死と隣り合わせのものの厳しいものだというのを俺達に改めて教えてくれるものだった。別の群れの子供など、ボクサー竜ボクサーにとっては格好の<餌>でしかないからな。


そうして、レッド達の子を咥えた駿しゅんは、自分の群れの子供達に餌として与えていた。


他の命を頂くことで自分達の命を繋ぐ。


この世界はそうやって成り立っているんだと思い知らされる。




そのことを知ったひなたは泣いていたが、世界が優しいだけじゃないことは知っててもらわなきゃいけないからな。


そんなひなたとは逆に、まどかは泣いたりまではしなかった。


この辺りも、見た目こそは人間だが遺伝子的には純粋な<パパニアン>であるまどかと、ひかりの実子であり俺の実の孫であるひなたとの差異なのかも知れない。


それと同時に、駿しゅんは決して極悪非道な<悪>じゃない。彼女は彼女なりに懸命に生きているだけだというのも、忘れちゃいけないだろう。


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