來編 引き際

先にも言ったとおり、きたるにしてみればそれこそ絶好の<八つ当たりの相手>を見付けたようなものだろう。


その一方で、オオカミ竜オオカミにとっては、<最悪のタイミング>での襲撃になってしまったわけだな。


まあ、あかり、ビアンカ、久利生くりうきたる、テレジア、グレイ、ドーベルマンMPMに加え、今はモニカとハートマンまで応援に来ているこの集落にそもそも付け入る隙などなく、<絶好のタイミング>などおよそなかっただろうけどな。


しかしその中でもさらに最悪だったのは間違いないと思う。


「ゴォオオオオアアアアッッ!!」


なおも引き下がらないオオカミ竜オオカミの群れに向かって、きたるが吼える。


『貴様ら! 皆殺しにしてやる!!』


と言わんばかりに。


まあ実際、そのくらいの感じだったんだろう。


なにしろ、そのまままた手近にいたオオカミ竜オオカミに喰らいついていったし。


「おるあ!! さっさと逃げないと本当に全滅させられるぞおっっ!!」


あかりもそう声を上げるが、当然、オオカミ竜オオカミには通じない。向こうにしたってそうそう引き下がれないだろうしな。


モニカとハートマン、グレイ、ドーベルマンMPMらの援護も受けつつ、あかりも独楽のように回転しながら蹴りを繰り出し、次々とオオカミ竜オオカミを打ちのめす。


いやはや、こちらも我が娘ながらとんでもない。


加えて、モニカ、ハートマン、グレイ、ドーベルマンMPMらの、絶好の性能試験にもなった。激しく動き回るあかりきたるに決して当てることなく、見事に援護を行う。その姿が実に頼もしい。


モニカ達についてはあくまで狙ったとおりの性能が発揮されてることを確認できただけとも言えるが、ドーベルマンMPMの方も、細かい部分のブラッシュアップが非常に効いているらしく、射撃の精度が格段に上がっていた。


これは嬉しい誤算である。


射撃の精度が上がっているということは、普段の細かい動きの精度も上がっているということでもあるので、すごくいい。


ちなみに、アリゼやドラゼも実はモニカやハートマンと差はない。あくまで今回以上に難しい状態だっただけだ。


などと、喜んでばかりもいられないか。こちらが強いということは、オオカミ竜オオカミ達にとっては、不幸でもある。


まったく。早々に諦めて引き下がってもらいたいものだが、向こうも興奮のあまり我を失くしてる状態なのか。


しかし、引き際をわきまえないと損害は増えるばかりだぞ。


しかもきたるも興奮してしまって抑えが効かない状態になってきているようだ。


返り血で血塗れの状態でなおも大立ち回りを繰り広げる。


闘争本能に、滅茶苦茶、火が点いてしまった感じか。


あかりやモニカ達がついていてくれれば心配はないと思うものの、正直、これ以上、争っていてほしくもない。


とは言え、ここまでの状態だと、止める手段もない。


まあ、こちらにはモニカ達がいるから、あかりきたるが疲れたら下がってもらって、後は任せてしまうこともできるけどな。


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