來編 襲撃

とまあ、ここまでが取り敢えず、あかりとビアンカから聞いた話を再構成したものだ。


で、きたるを外に連れ出したあかりは、


「ウルルルルルッ!」


いいところを邪魔されて怒ってるきたるを、


「ごめんごめん。でも、大丈夫だよ。順番なだけだから。きたるもちゃんと相手してもらうから…!」


そうなだめる。


もっとも、そんなことを言われたところできたるとしても納得はできないだろう。できないだろうが、


「それに、今はそれどころじゃないと思うよ……」


あかりがギリッと強い気配を放ちつつ、視線を逸らした。


「…!」


きたるもつられてそちらに視線を向けると、闇の中にいくつもの小さな光。


オオカミ竜オオカミの目だ。それも、川岸のすぐ傍まで来ている。


それらの様子を、モニカとハートマンが捉えていた。


ドーベルマンMPMも従えて。


あかりとビアンカが家に戻ったことで一気に距離を詰めてきたんだろう。


<襲撃>するために。


「ビアンカがせっかく決心できたんだ。野暮な真似はやめてもらいたいねえ……!


と言っても、通じないか……」


あかりのその言葉が通じないのは、オオカミ竜オオカミだけじゃなかった。きたるも、オオカミ竜オオカミ目掛けて猛然と突撃する。


水深は膝までくらいしかない川を一瞬で突っ切って、きたるオオカミ竜オオカミの群れへと突っ込んだ。


たぶん、普段ならこんな無茶はしないだろう。普通に考えれば多勢に無勢だ。


これはまあ、アレだな。


<八つ当たり>


だな。


自分が見初めた雄とのいいところを邪魔された鬱憤をぶつける<格好の相手>を見付けたということか。


さりとて、きたるだけに任せるわけにもいかない。


「ハートマン! 自動小銃を!!」


声を上げて手を差し出したあかりに、ハートマンが装備していた自動小銃の予備を投げて寄越した。オオカミ竜オオカミの群れが接近していたから、準備してあったんだ。


それをキャッチしたあかりは、決して大きくはないと言っても幅数メートルはある川を、ほとんど助走もなしで飛び越えてみせた。


着地と同時に銃のセーフティを解除し、空中に向かって「パパパッ!」と数発放つ。威嚇のためだ。その上で、


「そっちも生きるためだろうけど、襲ってくるなら容赦はしないよ!! 痛い目を見るくらいは覚悟してもらうからね!!」


声を叩きつけるようにして吼えた。


しかし、オオカミ竜オオカミの方も怯まない。威嚇発砲も、開けたところでのものだったからか、あまり迫力がなく、一瞬、ビクッとさせることはできたものの、効果も低かったようだ。


また、装填されているのはスタン弾だが、さりとて当たり所が悪ければオオカミ竜オオカミでさえ命を落とすこともあるものだった。


それを、向かってくるオオカミ竜オオカミに対して水平射し、打ちのめす。


「ギャン!」


「ギャヒッッ!!」


オオカミ竜オオカミの悲鳴が響く中、あかりと共にモニカとハートマン及びドーベルマンMPM、さらにグレイも並び、一斉射したのだった。


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